COZY922

プレステージのCOZY922のレビュー・感想・評価

プレステージ(2006年製作の映画)
3.8
インターステラーでも思ったことだが、クリストファー・ノーラン監督は特殊な環境を舞台にした人間の生き様とか愛や苦悩の描き方がとてもうまい。インターステラーは壮大なSFでありながら親子愛や人類という種の存続をかけての信念や情熱, 葛藤を描いたヒューマンドラマでもあった。プレステージもまた、マジシャンに纏わるミステリーにSF要素まで登場させながら、描いていたのは2人のマジシャンの人生観の違いと、光と影の交錯する様だった。

かつて仲間だった2人のマジシャン,アンジャーとボーデン。ある時、脱出トリックの失敗でアンジャーの妻が亡くなったことから2人の確執と憎悪の連鎖が始まる。お互いに相手のトリックを探り合い、成功を阻み、出し抜き、復讐をする。

2人は秀でている点も違えばマジックへの取り組み姿勢や人生における位置づけも違う。中盤登場するクローン装置を2人はどう使ったのか。マジシャンという職に人生そのものを捧げる心の準備があり、マジックのために生き方までを進んで犠牲にしたボーデンと、そこまでの発想はなかったアンジャー。そういう意味ではアンジャーはマジックへの執着やライバルへの強い対抗意識は持ちつつも常にマジックよりも家族との幸せの方に軸足があったのだと思う。

あの装置の受け止め方によって評価はひどく分かれるだろう。舞台が19世紀なのにSFチックな装置の登場というところで醒めてしまう人も多いかもしれない。私は、この設定を2人の生き方やマジックへの向き合い方の違いを際立たせるための道具だと捉え、こういうのもありだと思った。

本作の醍醐味は終盤の二重構造にある。物語の序盤で、あるシーンが示されそこから回想形式で事態を辿る形になっている本作。終わってみれば、この作品自体が観客をトリックで騙す壮大なマジックと言えるような作りだった。