Yoko

プレステージのYokoのレビュー・感想・評価

プレステージ(2006年製作の映画)
4.2
 19世紀末のロンドン。
ステージ上の電流が迸る球体の下で瞬間移動を披露するマジシャン”アンジャー”。
ライバルである”ボーデン”はその秘密を探るべく変装をして舞台下に潜入すると…。

 属するコミュニティ毎に人物像を変える人は少なからずいると思うが、まさに日々の人生を演技で通した人物たちを描いた物語。
マジシャンがより高みのマジックに登り詰めるうちに、徐々にマジックそのものに呑まれていく様子はとても面白く観れた。
 マジックがテーマである作品ということで、登場人物のマジックを見抜けるかどうかという部分に着目すると、後半やたら意味深なカメラワークが「もしや?」と懐疑させるには強すぎる働きをしていた。
ただ、諸所の発言がマジシャンとしての発言と呼応することで真意が掴みづらい仕組みになっていることはマジシャンという人物設定の妙であった。
 装置の超現実的なSF設定についても、これは騙された観客はまず面白く見ることが出来ることに加え、この仕組みに気付いた観客ならば、今作が示すメッセージとしてナレーションで語られる「観客の刺激への欲求」に対する皮肉を受け止めることが出来る筈。
メタメッセージを伝える道具としてこのSF設定が使われて、作中世界でうまく活用されたようには感じられなかったことは非常に残念。
しかし、後にこうしたSF設定は理論武装を施しハードSF”らしい”体裁を整え(杜撰であろうが楽しませるには十分)、ヒューマンドラマと融合した『インターステラー』において素晴らしい昇華を観ることが出来るので、ノーラン後追い勢として観るとそうした布石があったのかなと思いにふける。

 劇中で語られるマジックの流れに即して今作を評価するならば、「1.確認」「2.展開」が特に上手かった。
お得意の時間いじりがストーリーを複雑にしてはいますが、複雑であることは受け止めたうえで主張をわざわざナレーションで分かりやすくしてるので腑に落ちる、むしろ落としてくれる作品のように思えました。
Yoko

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