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プレステージのtakのレビュー・感想・評価

プレステージ(2006年製作の映画)
3.7
 マジックには3つの段階がある。「種も仕掛けもありません」と確認させること、物を消してみせたりする展開部が第2段階。そして消えた物が最後に戻ってくる、その最後の驚きを「偉業」(プレステージ)と呼ぶ・・・そんな冒頭のナレーションと、「映画全体がトリック」というノーラン監督の前口上。映画の冒頭からワクワクする気持ちが抑えられなかった。予備知識をほとんど持たずに劇場に足を運んだが、これが大正解。130分間、たっぷり驚かされて楽しませてもらった。これは一瞬たりとも気が抜けない映画。それは台詞や画面の細部に至るまで、きちんと伏線が張られているからだ。こういう練りに練り上げられた脚本をもつ映画は本当に面白い。

 確かにクリスチャン・ベール側のトリックは察しがついたと言えば途中からついていた。だけど見せ方が実に巧みで面白いんだよね。日誌に書かれた内容を追う回想なんだけど、それすら実は騙し合い。スカーレット・ヨハンソンほどの美女を配しておきながら色恋沙汰が物語の中心にならないなんて、ちょっと贅沢。

 後半で超自然的な展開が加わることを批判している感想も多いようだけど、そういう方々はきっとこの映画にミステリー要素だけを望んでいたんだろう。この映画自体も”見せ物”。そう思えばこの展開も僕は許せる。冒頭からヒントは無数に散りばめられている。それらの断片をつなぎ合わせる楽しみがこの映画。ミステリーを解くというよりも、ジグソーパズルのピースを探すような楽しさ。デビッド・ボウイ演ずる実在の発明家(ナイスな配役!)やエジソンのエピソードを絡めることで絵空事な物語に深みを与えている。それにしても・・・”瞬間移動”にこだわることは悲劇を生む。そのことをよーく知ってるのは「ザ・フライ」あたりを見慣れた僕ら映画ファンだろう。
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