けーな

アンジェラの灰のけーなのレビュー・感想・評価

アンジェラの灰(1999年製作の映画)
3.4
完全なるフィクションだと思っていたら、主人公のフランク・マコートが、自身の幼少から少年期を綴って書いた小説本が原作だというから驚いた。とにかく少年の暮らしぶりが、あまりに壮絶だったものだから。原作の「アンジェラの灰」は、ピューリッツァー賞と全米図書賞を受賞している。

まず、映像自体が、とても暗いので、明るくて楽しい映画が好きな人にとっては、眺めるだけでも苦痛かもしれないけれど、アイルランドの雰囲気と、貧しいフランキー家族が抱える苦悩がひしひしと伝わってきたので、暗い映像は、この映画に合っていて良かったと思う。

それにしても、雨が降ると、家の一階が水浸しに常時なってる、あの環境は、ほんと、身体に悪いわ。子供が亡くなってしまうのも無理はないし、肺の病気も蔓延するわ。

とにかく、父親が困った人だな。失業中に、ようやくありついた仕事で得た賃金も、飲み代にしてしまうだなんて。養う子供も多いのに。そんな父親役、ロバート・カーライルが、はまり役だった。ダメな父親なのに、哀愁を感じた。

母親のアンジェラを演じたエミリー・ワトソンも、上手かった。タバコばかり吸って口数少ないけど、胸に抱える複雑な気持ちがよく伝わってきた。

フランキーの青年期を演じた俳優さん、とても美しい顔立ちだった。前歯が味噌歯だったけど。少年期の弟のうちの1人が、あっ、この顔‼︎と映ってすぐに気づいた。ハリポタのシェーマスを演じたデヴォン・マーレイだ。ちっちゃい頃、可愛いな。自身も、アイルランド人だったのね。

映画を見終わってから、フランキー家族の置かれた状況や時代背景を解説している文章をネットで見つけたので、読んでみた。それで、この映画をようやく理解できた気がする。 

主に、アイルランドのリムリックが舞台。最初と最後は、アメリカのNY。

映画を観終わっても、タイトルの意味が分からなかった。というのも、映画で、全く触れていないのだから、分からないのも当たり前。後で調べてみたことには、フランキーが、ニューヨークに渡った後に、母親アンジェラと弟達をニューヨークに呼び寄せて一緒に暮らし、その後、母親が亡くなった時に、彼女の灰を、彼女の故郷であり、かつてフランキーも暮らしたリムリックに持ち帰ったことに由来するらしい。
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