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アンナ・カレーニナのpikaのレビュー・感想・評価

アンナ・カレーニナ(1967年製作の映画)
3.0
アンナカレーニナ映画版を見る①
歴史に残る名作であることを身をもって納得しつつもそんなことは関係ないとばかりに脇に置き、初めて自分が発見したかのような、この魅力は自分だけのものよと感じ入る、内に向かって膨らむ感動と表し難い衝撃を体験した原作を読んだので、数える気が起きないくらい作られている映画を見ていくことにした。
まずはロシア人にとってアンナと言えばこの人!となるくらいポピュラーなイメージを生んだというこの作品から。(ロシア・ビヨンド情報)

あっという間の130分。というのもテンポがイカれてて早すぎたから笑。やけに早口に聞こえるし余韻もほとんどないし詩情感も薄い。それでもジッと見てるといいところも少なからずあった。

キャラクターの再現度が高く、カレーニンの高い声、指を鳴らす癖、空気を読まずふざけた話をし続けるところ、オヴロンスキーのぽっちゃりした幸福そうな姿、清潔感があって誰からも好かれるところなど文字だけじゃイメージしにくかった描写が再現されていて、見て初めてなるほどと思ったほどだった。
ヴロンスキーもちゃんと禿げかけてる気がするし!!
原作にある細かい小ネタがこのスピードにしては丁寧過ぎるほど再現されていて、シーンを見進めるごとに自分が原作を読んだときの感情が蘇ってきて、映像によるイメージの増幅で読書中に味わった感情を反芻できる楽しさはあった。
役者がみんなとても良かったのでこのキャストでもっとちゃんと見たかったな。

ただ原作頼りも度が過ぎてて、原作既読の観客だけをターゲットにしてるのかなと思うほど。ロシア映画だから見る人は当然原作既読でしょうという前提なのかな。ロシアでは(ソ連時代も)学校で読まされると聞くし。
未読の人が見ても単に話の筋を追うだけでそこにある意図などの細かい部分やトルストイの思想は伝わりにくいんじゃ。映画単体では成立していないように感じた。

最初の舞踏会のシーン、アンナの登場を全身で見せて欲しかった。ダンスとキティのカッティングは良かった。
リョーヴィンとキティのくだりが申し訳程度なんだがあの長編小説を映画化するとしたら端折られても仕方がないよな。リョーヴィン主人公パートまで描いてたら映画になりにくい、ごっちゃになる、って感じか。アンナとの対比になる重要なキャラクターなんだけど映画にするにはやりにくい部分なんだろうな。
原作で大好きなリョーヴィンの草刈りのシーンや印象的だった結婚式のシーンを入れてあるのは人気があるからなのか、再現されていてとても嬉しかった。叙情感を煽りまくるライティングやシーンの繋ぎ目なども結構凝っていて良かった。
ただアンナの話が中心となり進んでいるので原作未読の人にとっては随所に入るリョーヴィンのシーンは突拍子もなくサイドストーリーにしては平行して見えにくいし、こんなんならバサッと削除しても良かったんじゃ、と感じるくらいパワーがなかった。無理やり繋がりを示すためか、リョーヴィンとアンナの会話を入れてたけど不発に見えた。そもそもエセフランス人のくだりを入れたりエピソードの取捨選択に強引さを感じた。ファン目線で好きなエピソードを寄せ集めたようなちぐはぐさ。

競馬のシーンは凄かった!!馬はあれ大丈夫なんかね!?おそロシア!!
弁護士がちゃんと虫叩いてるとか細かいところ再現するファンサービス。
単語の頭文字だけの会話が再現されててやっぱ人気のある名シーンなんだなと改めて。
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