シズヲ

アメリカン・グラフィティのシズヲのレビュー・感想・評価

アメリカン・グラフィティ(1973年製作の映画)
3.7
冒頭から『60年代前半の楽天的なアメリカ』のムードで引き込んでくる青春映画。舞台が舞台なだけにノリはアメリカンだし、ストーリーも起伏に乏しくて特別面白さがある訳ではないけど、それだけに独特の生々しさに溢れている。

やんちゃで多感な『一夜限りの出来事』が醸し出す何とも言えない切なさにグッと来るし、それを演出するウルフマン・ジャックのラジオが特に秀逸。当時のアーティスト達による楽曲の数々が多くの場面で効果的に用いられ、本作の空気感を作り上げている。全編に渡って活躍し、若者達のツールとして機能する『自動車』の存在感も印象的。至るところで登場人物の出会いや別れの空間、あるいは会話の場としての役割を担っているのが面白い。アメ車のデザインそのものにもやっぱり惹かれるものがある。

主要人物達の『その後』をテロップで極めて淡々と語り、最後はノスタルジーな“All Summer Long”と共に幕を下ろす構成があまりにもニクい。この映画で描かれていたことはベトナム戦争等を経た当時の人々にとって遠い日の思い出で、失われた無邪気な過去だったということを改めて叩き付けられる。実に儚くも惨くて、ある種の哀愁を感じてしまう。
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