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残菊物語のshxtpieのレビュー・感想・評価

残菊物語(1939年製作の映画)
5.0
じつは、溝口健二の映画は戦後のものしか見ていなかった。なので、この『残菊物語』ははじめて見た。すごい。長回しの、せりふとせりふのあいだの、たっぷりとした、ただただカメラがまわっているだけの余白に、「映画的」としか言いようのない時間が立ち現れている(たとえば、花柳章太郎が着替えをしているだけのところとか)。前半では、花柳と森赫子が道を歩きながら語らい、それをあおりで、ずいずいと追いかけながらとらえた長回しが圧巻(ああいった撮りかたは、濱口竜介もよくやっている)。また、後半では、奈落にいる森をかなり引いてとらえたショット、その数カット後の祈る森をとらえたショットが忘れがたい。それにしても、相米慎二はよく溝口健二とくらべられるのだけれど、こうしてみると、やっぱり共通点が多い(俳優を名前で呼ばない、ひどいところとか)。まあ、相米の場合はもっとめちゃくちゃで、がちゃがちゃしているのだけれど。しかし、物語としてはかなりきついものがあるかな……。
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