砂場

残菊物語の砂場のレビュー・感想・評価

残菊物語(1939年製作の映画)
4.2
これも衝撃を受けた一作。

菊五郎は養子の二代目菊之助(花柳章太郎)の芝居の出来に非常に不満があった。しかし周囲は若旦那菊之助をチヤホヤし誰も厳しいことを言わない。菊之助も己の未熟さを感じてはいたが芸を磨くことはしなかった。
弟の子の乳母お徳だけが彼にはっきりダメ出しする。その素直な物言いに感動した菊之助は次第にお徳に好意を抱く。しかしそこは古い歌舞伎界、仕様人が若旦那と恋仲になるなど許されるはずもなくお得は暇を出されてしまう。菊之助はお徳を女房にしたいが菊五郎から許されずお徳を連れ家を飛び出し大阪に。しかし出演する舞台の評判は散々であり、サポートしてくれていた多見蔵親方の死去もあり旅回りの一座にまで身を落とす。
4年後、ぼろい小屋での旅芝居、揉め事ばかりの役者たち、お徳との仲も悪化。困窮する生活の中でもお徳は菊之助を励まし続けるが、一座の興業は中止になり女相撲にとって変わられる。ついに行き場を失う二人。
雑魚寝の木賃宿で、福助の興業がこちらであることを知ったお徳は菊之助に内緒で役をもらえるように交渉する。そして一座の大役を得る機会がきた。数年間の苦労が芝居の表現を高め、評判もよく東京に戻れる事になった。
しかしお徳は自分は身を引く決心をし、姿を消す。
東京でも成功を収めた菊之助であるが常にお徳のことを思い出すのだった。大阪への凱旋公演があり、重い病気のお徳が大阪にいることを聞いた菊之助はお披露目の船乗り込みの時間が迫っていたため躊躇う。その時かつて交際を反対していた菊五郎が「女房の所へ行ってやれ、お徳がお前の芸を支えていた。自分も感謝していると伝えてくれ」と言う。
病床のお徳に会えた菊之助、旦那のメッセージをお徳に伝えるとお得は涙する。そして大事なお披露目の船乗り込みなので行きなさいと菊之助に最後の力を振り絞って言うのであった、、、、

身分違いの恋、お徳の真の強さ、菊之助への愛情の強さに感動する。最後の父菊五郎のセリフもグッとくるよなあ。こう言うの弱いんすよ、まあ鉄板のフォーマットなんだけど分かってても涙腺崩壊。

溝口の不思議な空間造形、入り組んだ舞台裏、横に移動するカメラ、なかなか主人公たちの表情は読み取れない。歌舞伎などの舞台ではなく映画ならではの表現ってなんだろうと言う原初的な試行錯誤が見られるのでこの時代の映画って面白い。
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