タミキーリ

残菊物語のタミキーリのレビュー・感想・評価

残菊物語(1939年製作の映画)
4.6
ふんだんな長回し、横移動や人物とカメラの間に何かが入る…この感じはそうか、オフュルスだわ。溝口作品は「近松物語」と「新・平家物語」しか観てないので、戦前のは初。いやー、ちょっとしばらく溝口作品観まくりたい。

河原を歩く場面のアングルが下から見上げるように撮っているので、メインの人物以外に空、建物、通り過ぎる人たちなど全てが入る構図に引き込まれた。歌舞伎の舞台は、ほぼ正面で様々な角度から、それ以外の舞台裏になると上下の動きを長回し。

あの赤ん坊が六代目なのか…とかいろいろ歌舞伎界の話としても楽しめた。花柳章太郎は、母が好きで「残菊物語」も新派の舞台でよく観たらしい。章太郎は手が早かったというエピソード、お徳役の森赫子はそれを本にしたって話も聞いた。

菊之助がお徳との仲を反対されて家を出て行く場面、それまできっちりカメラは菊之助の動きを追っていたのに、追うのをやめ、声のみのやりとりを聞かせながら里たちを映し、家を飛び出して姿が見えなくなった後の障子を見せるという演出が面白かった。

映画の中で行われる歌舞伎の演目、ひと目見てなんの演目なのかすぐにわかる場面が選ばれていた。四谷怪談の戸板返しのところとか、関扉の墨染が木の中から出てくる場面など。適当に選んではいない。歌舞伎の舞台も様々な位置から撮っていて、見応えがあった。