残菊物語の作品情報・感想・評価・動画配信

「残菊物語」に投稿された感想・評価

女性を過酷な境遇に追い詰めることについは、溝口の執念めいたこだわりを感じます。

奈落の底で祈ってくれる人には、非情で過酷な境遇の先にも救われていてほしい。
節句を過ぎた菊とて手を尽くせば尚美しく咲き続けるように、献身的な女の支えで芸の道に開花する歌舞伎役者の身分違いの悲恋。
長回しとドリーショットで表現される日本美にくらくら。小津安二郎の徹底して作り込まれた場とは対極のリアリズムに震える。陰影が天才的で特に1人で部屋で俯くお徳のやつれた顔を覆う影がすごい。照明が神。
また冒頭で挿入される風鈴の音がいい。太鼓や祭など画面外の音の使い方も特徴的。
カットバックで作品の終わりも同時に意味するような菊之助のラストの所作、からのタイトルというのも完璧すぎた。

どうでもいいけど風鈴の屋台っていいな。
風鈴屋さんになりたい。
親の七光り。

歌舞伎の若旦那の孤独。

堕ちて行く若旦那と支える女。女は乳母という身でありながら若旦那のことを真に思い彼にとって厳しい指摘もする。それは愛あればこそのことと伝わってくる。

男の映画と見せてやはり女の映画ですね^_^

時折挟まれる歌舞伎が、良い感じでアクセントになってます。

長回しが冴える。横移動に痺れる。おお!と言うカットに溢れてる。これが溝口マジックが確立した作品か!

戦前にこんなスタイリッシュな作品を作っていたとは。いやはや、素晴らしい^_^
本心から誰かのためを思うこととは。


超絶大傑作。めちゃくちゃよかった。
たぶんこれが溝口最高傑作。
戦前の溝口最高傑作とも名高い本作。
戦前の溝口作品の中でも全編残っているという、希少な作品でもある。
長回しを駆使し、女性の立場を描いた作品が有名だが、本作も例に漏れず。

本作は才能がないにも関わらず、若い女たちからちやほやされていた菊之介の物語。
親という大きな存在があり、そのせいで誰からも叱責されることはない。
あの男の嫁になれば将来安泰だから、あの男に気に入られればコネができる、そう考える誰もが誉めることしかしない。
菊之介の心のなかでは、自らの実力のなさを感じていた。

いわゆる“二世”的な立ち位置の主人公。
傲慢な立場の人間が多くなりそうなキャラだが、本作の菊之介は自身の未熟さを理解している。
周りの奴らは心にもないことしか言わず、これは結構現代でもありがち。
気に入られりゃ親の存在もあるし、しばらく安泰だからね。
そんな彼にはっきりと真実を告げる女性がいた。


立場の違いにより、結ばれることが難しい二人。
ロミオとジュリエットのようなオーソドックスな脚本ではあるけれど、そのワンシーンの積み重ねのすべてが印象に残る。

本作が好きなのは、菊之介が努力家であり謙虚であり、誠実さもあるところ。
自分の実力不足を痛感していることに正面から向き合う姿勢。
自分の成長を続けるために、苦しい生活にも耐える姿。
サクセスストーリーでもありながら、悲哀な恋愛を描いた作品でもあり、その上美しい情景が作品を彩る。
日本人らしいとも思われる菊之介とお徳の関係も、本作では静かに美しさを放つ。
作品のショットや構図の美しさは本作でかなり印象的になった。
おそらく、前2作品は自身の家族を題材に描いており、メッセージの部分がかなり強かった。
本作はシンプルな筋道である分、映像の美しさが際立つんだよなぁ。
すいかのシーンを観るだけでも価値があるし、そのすごさを感じる。


誰かのためを思い行動すること。
お徳が菊之介を思うように、自身を犠牲にするかのような行動をとったこと。
菊之介が、立場の違いなど気にせず菊之介という人間として評価してくれることに感謝をすること。
その美しさは、本作では画作りという場面にも輝きを放つ。
本作は不幸な女性ではなく、幸福な女性が描かれる。
前作の価値を模索する女性ではなく、自分自身に価値が明らかに存在し、その価値が他者へと広がっていく。
それはなだらかに染々と深く。
ひる

ひるの感想・評価

4.1
旅芸者の過酷な現実と、男女の引き裂かれる運命がシークエンスショットの積み重ねにより重みを増す。
ヤグ

ヤグの感想・評価

4.0
【女の自己犠牲が男を一人前にさせる切なすぎる愛】

溝口監督の伝家の宝刀「ワンシーン・ワンショット」を確立した作品。

まるでその場に居合わせてるような映像マジックで観る人の心をギュッと鷲掴みにしてきます。

このワンシーン・ワンショットによって、要求されるのは
・長時間に渡る役者の高度な演技
・変化していくカメラワーク
・セットの配置
・照明技術
など...

それら全ての要素を完璧にまとめ、クオリティの高い映像を作り上げた今作は、
もはや『芸術』です!
マジでエグすぎます。

もちろんエグいのは映像美だけではありません。

男と女の仲を引き裂こうと幾度となる試練に負けまいとする姿。
しかし2人が一緒にいることで、男がどんどん駄目になっていく、、、
2人は同じ方向を向いているのに、、、

女が選択した決断
身分差別社会に生きる女の内なる強い愛に涙を流さずにいられないです。
これが戦前1939年、溝口健二の作品か
jack

jackの感想・評価

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再見。お徳の懇願によって実現した、再起をかけた公演で、舞台袖で食い入るように見つめるお徳が、見ていられなくなってその場を離れて祈り続ける場面で半泣きに。最後のシーンの切なさといったら。あまりにも素晴らしい。

戦前の溝口健二の代表作。
明治の名優五代目菊五郎の養子・二代目菊之助の悲恋をえがく。

徹底してもちいられるワンシーン・ワンカットがもたらす緊張感の持続は、舞台を観るときのそれに似る。
戦前の歌舞伎の雰囲気を感じさせる劇中劇だけだけでなく、全編にわたって最上の芝居を特等席で観ているようで、引き込まれっぱなし。

旧き良き時代の和物の自然な所作がおりなす見事な世界。
モノクロの映像のなかで見せる光と影のすばらしさも特筆もの。
役者の名演と見事な演出がひとつになった奇跡のような傑作だ。
これはちょっと凄まじ過ぎる。こんだけ評価高いのも納得。

「ワンシーンをワンカットで撮る」っていう「溝口スタイル」が完成した作品らしい。
ただ、個人的には今作以降の作品より今作の方が好きかな(現時点では『雨月物語』『近松物語』しか観てないけど)。

とにかく長回しが凄い、ってのが第一印象。
フィルム時代で、しかも戦前にこんな長回しを実現させてたなんて…って思ってしまった。凄い。

今作に多い「長回し&移動ショット」だとエキストラが増えてしまう。それも計算の内だとは思うんだけど、その多いエキストラによって、臨場感が生まれる。「あ、世界がここに存在してる」って。「あ、アイツあそこでこんな事してやがるw」とかも。
豊かになって世界が出来上がってる。

最初からその「長回し&移動ショット&大量のエキストラ」で心を鷲掴みにされる。

ただ、ストーリーに関しては、「子が親を超える話」に思えば、結局最後は家柄というものに頼ってる。そこは現実とは違っても、最後まで自分の力で名声を勝ち取って欲しかった。
物語の重きは女性の方に置かれているのかもしれないけど、最後をそう変えても問題は無かったんじゃないかな。

あと、やっぱり、「ここだ!」って時に主人公のクローズアップ1つだけでいいから、それがあると良かったな、とも思う。
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