地獄の英雄の作品情報・感想・評価

「地獄の英雄」に投稿された感想・評価

名作。カーク・ダグラスカッコ良すぎ。息子マイケル・ダグラスにクリソツ。人命よりも功名心、お金儲けに走る人間心理をブラックユーモアに描写。ビリー・ワイルダーの隠れた名作。
地方新聞社に流れ着いた悪徳記者が、落磐事故で生き埋めになった男レオの救出作業を演出する事で、NYの全国紙に再帰を図ろうとする問題作。カーク・ダグラス演じるチャールズが特ダネを独占的に報道することで、事件を聞きつけた人々が集まり、町には移動遊園地が設けられるほどのお祭騒ぎになる。

レオの妻のロレインは夫の安否を気遣う様子もなく事故の見物客相手に商売を始めるが、レオの状態は日に日に悪化していく…。B・ワイルダーらしい軽快なコメディ要素は極力抑え、マスコミの報道操作の怖さと人間のエゴをシニカルに描く社会派ドラマ。
ワイルダーの中ではまだ視覚的な方。
abe

abeの感想・評価

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ビリー・ワイルダーの中でもトップレベルで好き。人の死や他人の不幸は一番の商売になるというのをここまで皮肉に描くのは天才。
al

alの感想・評価

4.7
ジャーナリズムを痛烈に風刺した傑作。
人命より地位と名声、金儲けにしか目がない人間の欲深い心理を描く。シリアスな社会派であると同時にサスペンス要素も味わえる完成度の高い作品。

レッカーで偉そうに登場し、上から目線で記事を売りつける大手新聞社をクビになった記者テータム。ある日レオという男が洞窟に生き埋めになるという事件が起こる。テータムは保安官を使ってレオの救出を長引かせ自分の名声を得ようとするが…

カーク・ダグラスのビンタを食らわす絶妙なタイミング、穿った台詞の言い回しにレオの救出が進むにつれて顔つきがワルになっていく姿が印象的。

今作もワイルダー流、辛辣で皮肉の効いた台詞の数々が面白い。テータムが保安官にレオの救出作戦を持ちかける場面で、カードゲームの最中に呼び出された保安官は「貴様なぞブタ箱にぶちこんでやるぞ!」と突っ掛かる。するとテータムは「ポーカーではどんな手がきたんだ?せいぜい2のワンペアだろ。こっちには穴の中にエースがあるんだぞ!」と返す。これが題名にもなっている”The Ace in the Hole”なのだが、うーん気持ちがいいくらい上手い。
shibamike

shibamikeの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

1925年。ケンタッキー州にてフロイド・コリンズという男が死んだ。
しかし、彼はその死に際してアメリカ全土において超有名人となり、暗い洞窟の中、身動きも取れず飢えと渇きと体温低下の中、力尽きた。らしい。
洞窟内で身動きが取れない彼の救出を、アメリカ中が注目し、大変な騒ぎだった。らしい。
取材を担当した記者はピュリッツァー賞受賞だったとか。

この実話を下敷きに本作は作られたのであらう。とに面白かった。かく面白かった。とにかく面白かった。


タイトル的に、地獄的状況で主人公が英雄となって、みんなをピーハツ(ハッピー)にするシーハナ(話)かと思ったら、アラニサ(さにあらず)!
地獄における英雄、というのは結局最上級のクソ野郎ということなのであった!
では、おっちゃんと一緒にみんなでこの作品を振り返って行こう。
はい、綿菓子!綿菓子!


阿漕なやり方で売れっ子新聞記者だったチャールズ・テイタム(カーク・ダグラス)が仕事でヘマをやってニューヨークから田舎の新聞社へ都落ちする所から話は始まる。
のどかな田舎の新聞社で一年働いたテイタムであるが、フラストレーションが溜まる一方であった。
テイタム「ここには事件は無いのか!」
田舎で大きな仕事をものにして、いずれはニューヨークへカムバックしたいテイタムにとって、田舎ののどかさは物足りなさ過ぎた。

そんな時にテイタムはこの田舎で、ある事件に出くわす。

ネイティブアメリカンの古い岩窟住居(すげえデカイ)でトレジャーハントしていたレオ・ミノザという男が岩窟内の落盤によって身動きできなくなっていたのだった。
まだ落盤の危険がある岩窟内に侵入して、身動きの取れないレオにテイタムは親切に近づいて、カメラでレオを1枚パチリ。テイタムは岩窟から出て、急いで仕事に取り掛かった。
テイタム「フロイド・コリンズの再来だ!」
新聞記者としてまたとないチャンスの到来に俄然興奮するテイタム。

翌日、テイタムの撮った写真が新聞の一面を飾ると、荒野しかないド田舎にとんでもない騒ぎが起こる。
新聞を見た一般市民が次から次へと事件現場である岩窟近くへとやってきて、「これが新聞に載ってた岩窟か…」と意味不明に感心するのであった(野次馬すげえ!)。
荒野しかないへんぴな場所なので、飲食店も一軒しかなく、その飲食店はびっくりするくらいの大繁盛。
新聞の発行部数も普段に比べてはね上がった。

テイタムはせっかく掴んだこのチャンスを徹底的に自分の為に利用しようと舌なめずり。地元の保安官に
テイタム「あんたが市長選で当選できるように手伝ってやる。」
とてなずけ、保安官の権力で自分以外の記者がレオに取材するのを完全シャットアウト。
これくらいはまあ、あるのかもなと映画を観ていて自分も思ったが、テイタムの阿漕っぷりは、自分の予想を余裕で飛び越えてきた。

地元建設業のオッサンが岩窟調査した結果、レオ救出には
オッサン「岩窟内に落盤防止の梁かなんかを設置する必要があって、16時間程度は作業に掛かる。」
とテイタムと保安官に報告したところ、
テイタム「16時間!?」
とテイタムは驚く。
救出に時間が掛かり過ぎという意味で驚いたのではなく、時間が短すぎるという意味で驚くテイタム。
自分が新聞記者のヒーローとなるには最低でも一週間は騒動が続いて貰わないと困る。
レオの命ガン無視で、そろばん勘定したテイタムは建設業のオッサンに救出方法の変更を提案する。
テイタム「岩窟のてっぺんからドリルで穴を掘って、レオを救出しよう!」
そんな方法は非効率過ぎる!一週間は掛かってしまう!と猛反発するオッサンをテイタムと保安官が無理矢理黙らせて、救出方法はドリル掘削に決まってしまうのであった。

で、いざレオ救出プロジェクトが始まるのであるが、世間の騒ぎ方がお祭りそのもの。無関係の一般人が岩窟に近づくために入場料を取るところから始まり、屋台などの出店、メリーゴーランド、観覧車が岩窟の近くに出来あがり、岩窟来場者向けに特別列車まで走る始末。
我々一般市民は事件というか、騒動というか、お祭りを欲している。
この一連の浮かれ騒動を象徴しているのが、どっかのバンドグループが「レオ救出」をテーマにオリジナルソングを作って、「レオ~♪今、行くよ~♪」みたいな感じでひたすら歌い続けるのであるが、アホさ加減が絶妙の結構良い歌でビリー・ワイルダーすげえわと思った。

身体が頑丈で朗らかなレオであったが、救出が無理矢理長引いたせいで、体力衰弱が顕著になりだす。
身動き取れないという悪条件に加えて、ドリルによる岩窟掘削の騒音がレオの神経を参らせてしまう。
ドリルの騒音なのであるが、間欠的にガーン!…ガーン!と響き渡る感じの騒音で、岩窟てっぺんから岩窟内のレオに近づくごとに騒音の音量も大きくなり、
レオ「俺はもう死ぬ。あのドリルの音は死神の足音だ。足音がどんどん近づいてくる。」
みたいなこと言うのであるが、憎い演出であった。

で、レオの悲しい予想の通り、レオは肺炎を患ってしまい、岩窟内で死んでしまう。
レオがフツリと息絶えたのも知らずに岩窟の外では観覧車、メリーゴーランド、屋台ではしゃぐ子ども、取材するテレビ局、歌われるテーマ曲。世の中がアホらしくなるような素晴らしい映像だった。

レオを死なせてしまい、さすがに責任を感じたテイタム。
しかし、やっぱり頭がイカれているので、
テイタム「実はレオが死んだのは俺のせいなんだ!」
という自爆的に特ダネにして新聞社に売り込むも無視されて、色々あって死ぬ。

こういう鼻持ちならない利己的な出来事って人間の歴史で数えきれないほどあるのであらう。ニュースを伝える側の人に色々細工されてしまったら、我々受信側はしんどいっすわ。

自分はこの映画観ていてなんとなく思い出したのが、8年くらい前(2011年頃)にあったオセロ中島の洗脳騒動であった。
同居人に洗脳されてるといって、連日ワイドショーで「中島大丈夫か!」みたいに報道されていたと記憶している(大丈夫ちゃうわ!)。そして、わけわかんない男が騒動に便乗してTシャツ作って売っていたのを見て、唖然としたのも覚えている。というかググったらいまだにそのTシャツ売っていて笑った。

シンプルにストーリーが面白かったのであるが、それ以外にもこの映画には「脱出したい」という人間の願望が全編に渡ってちりばめられていて、観ている我々オッサンどもを「ふんぎゅるぬうぬう!」と唸らせた。
岩窟から脱出したいレオ。
田舎から脱出したいテイタム。
この他、本作には主要キャラクターとしてレオの妻がいるのであるが、この嫁さんはレオと結婚したことを後悔していて、
レオから脱出して華やかな世界へ行きたい、と考えているのであった。
そして、一番どうしようもない脱出願望を持っているのは岩窟周囲に集まった野次馬くん・野次馬ちゃん達である。
自分には危険の及ばない範囲で刺激を得てつまらない日常から脱出したい・忘れたい。
そしてそして、その野次馬くん・野次馬ちゃん達に輪をかけて救いようのないのが、令和元年にこの古くさい映画を観て身悶えている我々オッサンであらう。
現世から脱出したい!
でも、脱出したところで、幸せなんてないのでせうか。
オッサン!
OSSAN!


映画の中でテイタムが力強く言うのであるが、
テイタム「不幸なニュースが一番売れる。良いニュースなんてニュースじゃない。」(Bad news sells best. Cause good news is no news.)
いやはや悲しい言葉である。
原題の「The Big Carnival」。素晴らしいタイトルでありんす。


良い子のみんなは卑怯な大人にはならないようにね!はい、綿菓子代は一人7,800円だよ!

盆三毛 心の一句
「墓参り レオの魂 安らかに」
(季語:墓参り→夏)
穴に埋まった切り札。
生き埋めになった人の父親がどことなくハリー・ディーン・スタントンに似ていた。カーク・ダグラスの平手打ちは強烈で、破滅に向かってまっしぐらの姿には悲壮感があります。そういう点では、ジャック・ロンドンっぽいかもしれない。
すごいなぁと溜息。悲劇を消費する社会。善人かもしれない誰かが悪漢を演じる世界。70年近く前に批判されてた。
magnolia

magnoliaの感想・評価

4.2
カークダグラスさんが激しい野心家役でエライカッコいい
レッカー車で偉そうに登場など冒頭はコミカル、マッチの着火にタイプライターは斬新

記者の主人公は野心が過ぎて命の扱いを間違える、当然良くないが悪くも思えない、何故なら彼は証明された " human interest " に従って行動の選択をしているから
" bad news sells best, good news is no news "
救出劇の見学にウヨウヨ集まる一般市民、臨時列車の運行、屋台が現れ、バンドが救出の歌を作り、被害者の嫁は駐車代搾取
" this is the Mr. and Mrs. America "

間違いに気づいてからの主人公の焦燥感だけに良心が見える
この悲劇を作り出したのは大衆とも言える、病んだ集団心理の焙り出し方に感服、ただ唸るしかない
shatoshan

shatoshanの感想・評価

3.9
1年が経過する華麗な着席やタイプライターでのマッチ着火の小気味良いテンポからサーカスの狂騒、そしてその終焉への転回の上手さがワイルダーらしい。
ただファムファタールが別に美人でも悪女でもなかったり、全キャラクターが妙に人情的なのが違和感ある。それを含めて現代的だとは言えるかもしれないけど……
前年のサンセット大通りにはやはり比べられない。
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