くわまんG

ベティ・ブルー/インテグラル 完全版のくわまんGのレビュー・感想・評価

4.5
あらすじ:僕が永遠に愛する女性、ベティの話をしよう。

ベティはヒステリーですが、メンヘラビッチではありません。むしろその要素、すなわち嫉妬や色欲や強欲とは無縁です。依存しない浮気しない金品をねだらない、お隣さんに比べて云々さえも言いません。

ベティが望んだものと言えば、夫ゾルグの夢の成就と、夫とのラブラブセックスと、その結晶だけ。そのために、徹夜でタイプして掃除して料理して愛し合います。その態度は内助の功であり、“見返り”を求める利己的なメンヘラの態度とは真逆です。

ですが、思い通りにいきません。周囲がベティのような考え方ではなく、自分だけ都合よく生きられる道を探ろうとする、いわゆる凡人だからです。

社会は、凡人が形成しています。なので悪意や損得勘定で溢れていますが、ベティにとってそれは時として地獄です。なぜなら彼女には、愛より性を求める理由が、夢より金を欲する理由が、つまりエゴが微塵も理解できないからです。

他人のエゴに触れる度、彼女はぶちギレてしまいます。悪意はありません。アレルギーのように、即反応してしまいます。放火も暴行も誘拐も、アレルギー反応なのです。

ところでアレルギーの治療は、原因(アレルゲン)から隔離するか徐々に慣れるかですが、激しいアレルギーだと触れただけで致命的となります。ベティのアレルゲンは社会です。隔離不可なのは言うまでもなく、慣れることもできないとなれば、その処方箋は…。

心が望む景色を、いつまでも映さない眼に対するアプローチは、ゾルグにだけ解る悲痛なSOS。生き甲斐を見つけられずに焦っていた彼が、彼女と過ごした日々をきっかけに自立するのも感動的でした。

その後魂の傑作を遺して直ぐに後を追ったか、ベティが快適に生きられるような社会作りに貢献したか、いずれにせよゾルグの余生は充実していたことでしょう。

あと、やっぱりメインテーマ曲の威力が凄いんですよ。全てを失って人生を得た夏休み、みたいなね。たまりませんね。