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市民ケーンのtsuraのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
4.5
映画史上最高傑作として常に映画史に燦然とその名を轟かせる「市民ケーン」
この作品を見たのは2回目で、初見当時は中学生時代だった事もあってか、なんせ全く印象がなく笑 
何が最高傑作なのか理解出来なかった。

しかし今回D・フィンチャー監督作「Mank」を鑑賞するにあたり、本作を再度鑑賞する事にした。(レビューは前後してますが本作を先に再鑑賞)


度肝を抜いた。
こんな素晴らしい作品だったのかと。

1人の男の人生を炙り出す凄みで言えば近年で言えば「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」にトーンは近いと思うのだが、なんせ面白かった。そして感動してしまった。

1人の人間の生涯を2時間弱という尺の中で、どうすれば追体験出来るのかを徹底的に推敲した上で成し遂げられた奇跡的な作品だろう。


何故、メディア王として頂点に君臨した人間が"市民"ケーンなのか。

政治家として成り上がった時の名残り?
新聞社で市民にとっての新聞社を誓ったから?
それとも愛国者として?

そのどれもが正解だが、そのどれもが正答ではなく、そのケーンという人間を一気に所詮、人間なのだという焦点に合わせる為の最後の言葉「バラのつぼみ」の真意を伝えるクライマックスには衝撃以上に感慨深い人生の哀切を感じさずにはいられない。

矜持の果てに、栄華を誇ろうとも届かないもの。それをオーソン・ウェルズは時にサスペンス映画として、時に政治ドラマとして、時にラブロマンスとして、時にサクセスストーリーとして…1人の人生を克明に描いていると思う。

革命的な撮影手法ばかりがフォーカスされてるが、矢張り「Mank/マンク」でも語られてるが、この語り口、ストーリー構成は秀逸だしこれこそ革命的だ。
そしてそれを存分に自身が演じきり最高のパフォーマンスを持ってスクリーンの中で躍動している。これにはあまりにも恐れいる。

当時にして彼の齢は26歳。

私はとうに彼がこの作品を生み出した年齢を超えてしまっている。(悲鳴)

そんな野暮な悲鳴は脇に置いておくとして、この一大芸術が放った強烈な閃光は永劫消える事はないだろう。

ホントに凄まじい作品だった。
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