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市民ケーンのおーたむのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
3.8
個人的な話ですが、映画をレビューするのは9ヶ月ぶりらしいです。
お気に入りの映画ばっかりぐるぐる回してたんですが、それもなんだかなと思ったので、気分転換にと、映画史上のベストワンとも称される本作を手に取ってみました。

死んだ新聞王ケーンの人生が、関係者へのインタビューによって浮き上がってくる話。
「あの時こんなことがありました」が積み重なって一つの作品になってる感じです。
フラッシュバックという手法だそうな。
私がこれまで見た映画の中では、黒澤明監督の「羅生門」「生きる」とか、小林正樹監督の「切腹」とかに似てますかね。
話の中心となる人物がすでに死んでしまっているため、臨場感はそこまで感じないんですけど、このスタイルには物事の真相にどんどん分け入っていくような奥深さを醸し出す作用があるみたいで、興味は最後まで持続しました。

撮影にもさまざまな技術が使われているとのこと。
素人目にも理解できたのは、さまざまなアングルからのカットがあることと、陰影の付け方が印象的だなあということです。
特に、モノクロなので、陰影については見ていてとてもインパクトがありました。
だからなのか、80年前の作品であるにもかかわらず、映像はスタイリッシュ。
エポックメイキングな作品だったんでしょうね。
キャラクターの心情を表現する方法って、役者さんの演技だけじゃないんだな、撮影の技術でもそういうことを表現できるんだなということを、あらためて思わされました。

率直に言うと、映画史上のベストワンという触れ込みに期待して鑑賞すると拍子抜けすると思います。
現代の作品を見慣れた目で見てもなお革新的な作品とまでは言えないよな…と、私なんかは思いましたので。
とはいえ、細部に散りばめられたアイデアが思わぬところでキラッと輝く、いい作品だとも思います。
熟成されたヴィンテージの味わいって、こういうものなんでしょうね。
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