まちゃん

市民ケーンのまちゃんのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
3.9
ニュース映像を模したドキュメンタリー的演出、フラッシュバックを多用した構成、パンフォーカス、クレーンショット、ローアングルなどの撮影技法。市民ケーンを語る時にはエポックメイキングな技術面に焦点が当たりがちだ。ここで見逃してはならないのはこれらがただアイデアの提示で終わらずに極めて効果的に使われている点だ。冒頭のケーンの死を報じるニュース映像で観客はまず公人としてのケーンの業績を知る事になる。そして記者を狂言回しとして関係者の目に写ったケーンの姿が回想シーンと共に物語られる。時代を前後しながら描かれるその人生。本人不在の中で語られるという構成が逆にチャールズ・フォスター・ケーンという巨人の存在感を強く浮かび上がらせる。新聞王として絶大な権力者に上り詰めたケーン。ザナドゥ城の威容はケーン自身を象徴している。その中で言い争いをするケーンと妻スーザン。巨大な空間に虚しく響く声は空疎な内面を感じさせる見事な演出だった。また膨大な収集品によってケーンの抱え続けた心の餓えを表しているのも唸らされた。ケーンが生涯をかけて追い求めたものは何だったのか。本当の幸福とは何かを考えさせられた。
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