このレビューはネタバレを含みます
照明技術に感動を覚えたい人におすすめの映画です!
明暗の使い分けが巧妙すぎる。白黒映画だからこその魅力というものを誰かに伝えたいときはこの作品をお勧めしようと思いました。
一財を築いたケーンの人生を、冒頭でざらっと全部ネタバレして進行する物語構成がすごく良かった。新聞という切り取られた一部分の奥を探っていく体験は、下世話だとわかっていても詮索してしまう野良ゴシップを追う本能を刺激されてしまって、最後まで飽きずに見続けてしまう。
物語に少し触れます。
全体を通して、スーザンの放った「あなたがくれるものは私のほしいものじゃない」というセリフが、この映画が視聴者に問うものだと感じました。
一方の視点で見ると「まじ金持ちオジってなんでも金でモノ言わそうとするよね〜成金きめぇ〜」って、お金持ち下げな印象を持ってスーザンに同情してしまう。
しかし、ふと疑問がよぎりました。
スーザン、あんた「歌うのが好き」って言ってケーンと出会ってない?
きっと「大きな屋城に住みたいなぁ」なんて夢も語ったんでしょう。
わがままが通る環境が悪だったわけで、空虚なものしか受け取れなかったのは贈り手ではなく受け手の問題では?
トンプソンが「哀れに思う」と評したように、この物語はちゃんと ”欲しいものを手に入れるために頑張った市民” が、欲しいもののために奮闘する物語。ケーンは冷血に描かれていない。社員に好かれていたのがその証拠。ちゃんと欲しいものを探して見つけられていないハングリーさが滲み出ている。熱血。
自分勝手ではあるけれど、めちゃめちゃ他人を想う努力が見えてるからこそ「哀れ」すら感じる。
リーランドに小切手送ってクビにしたのも、(だいぶ身勝手ではあるけど)愛情あるよねぇ〜。嘘は書きたくないからこそ記事が書けないリーランドと、それを汲み取って真実を書くケーン。
そしてラスト。
ケーンの最後のセリフを軸に物語が進行していくのだから、物語最後のセリフはきっと粗雑には扱わないだろうと思った。
「ガラクタは捨てろ」
と、捨てられたソリ。
まだ愛情に純粋だった子どもの頃に大好きだったもの。このソリはケーンの「欲しかったもの」だったんじゃないだろうか。
欲しかったもの。
買ってもらったもの。
嬉しかったもの。
思い出が一緒に染み込んでいるもの。
大切なもの。
ソリがどうして「大切なもの」なのか、ケーン自身がその正体に気付けないまま人生を進めちゃって、何を手に入れてもソリ以上には愛せなくて。
最後、その正体をついに突き止めたとき、その価値の偉大さというのか複雑さというのか、自分で手を伸ばして手に入れられるものじゃないと気がついて、「あ、これ無理だわ」と、倒れたのでは。
だとしたら美しすぎる。
そして何より、映画の構成が素晴らしい。
たぶん一般的に考えられる構成であれば、冒頭に伝わった新聞記事が書く内容とインタビューにて明らかになっていく生前ケーンとの相違から、「あぁ、断片的な情報ってやっぱり真実じゃないな」と、真実解明に楽しくなる映画になりがちだけど、この映画は違う。新聞記事とインタビューにそこまで相違はなく、むしろ肉づけとしてより詳細に伝わってくるだけで、上澄だけで見たら「書いていることが全て」でしかない。記事は間違っていない。
だけど話を繋ぎ合わせて見えてくるネガティブスペース的な輪郭で現れてくるケーンが、非常に「人間」で、「哀れ」に見えてきて、新聞記事にはうまく文字にできない真実が明らかになっていく。
インタビューを受ける5人こそ、自分のことしか考えていなくて面白い構図になって見える。
この物語の構成、めちゃくちゃいいね。面白い。
レビュー書いてたらより深く腑に落ちたものがあったのでスコアを加点しました。あはは。
つまり、ケーンの書く新聞記事に "嘘はなかった" というわけですか。
おもしろい!