マヒロ

市民ケーンのマヒロのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
4.0
「バラのつぼみ」という謎の一言を遺して亡くなった大富豪ケーンの真意を探るべく、記者たちはケーンのかつての所縁の地や人物の元に赴く…というお話。

冒頭のドキュメンタリー番組チックなシーンでケーンの生涯=物語のあらすじをサラリと説明してしまい、その後取材という形で少しずつ詳細を明らかにしていくという結構大胆なやり方。時系列があちこちに飛んだり、あっと驚くような映像マジックが出たり、光と陰を上手く使って登場人物の心情を表したりと、やれることは全部やってやるというような気概が映画全体から迸っているようなパワフルな作品。

才能一つでのし上がっていったケーンが、やがてその融通の利かない見栄っ張りな性格から、周りの人の信頼と地位を失うことになる…というのは、現在の成り上がりものにも通ずる普遍的な構成。
ただ、ケーンはとりわけ悪人というわけでもなく、言うなれば歪んだ承認欲求のようなものが原因で周りから避けられてしまったようなもので、単純に悪い奴が失脚したというだけではない哀しさもある。
そもそもケーンがそういう性格になった遠因に「バラのつぼみ」という言葉が関係していて、その正体が明らかになるラストカットで、今まであらゆる人から語られたケーンの最後まで明らかにならなかったパズルのピースが見事にハマるという驚きもあるし、且つ誰も彼が本当に欲していたものを理解出来ていなかった…という切なさもあって、今まで映画を観てきて考えていた視点をガラッとひっくり返されるような感じがした。

やたらと持ち上げられていてハードルが高くなってしまっている印象もある作品だけど、充分評価に足る凄みのある映画だった。

(2018.40)
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