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市民ケーンのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
3.8
25才のオーソン・ウェルズが製作・監督・脚本・主演し、映画史にその名を残すことになった画期的作品。
実在の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルに、アメリカの新聞王の実像に迫る。
撮影はグレッグ・トーランド
音楽はバーナード・ハーマン
編集はロバート・ワイズ。
原題: Citizen Kane。(1941)

巨大な城「ザナドゥ」に住む新聞王ケーン(オーソン・ウェルズ)が、“バラのつぼみ”(rosebudローズバッド)という謎の言葉を残して死んだ。
ニュース記者は、“バラのつぼみ”の意味を知ることでケーンの実像に迫ろうと、彼の生涯に関係のある5人を訪ねる。
・後見人で銀行家のサッチャー(ジョージ・クールリス)、そして回顧録が納められた図書館
・ケーンの旧友で新聞社「インクワイラー」でのパートナーでもあったバーンステイン(エヴェレット・スローン)とリーランド(ジョゼフ・コットン)
・2度目の妻で元歌手のスーザン(ドロシー・カミンゴア)
・ザナドゥ城の執事(ポール・スチュアート)。

~他の出演者~
・ケーンの母メアリー(アグネス・ムーアヘッド)
・大統領の姪で、ケーンの最初の妻エミリー(ルース・ウォリック)
・ケーンの政敵ジム・ゲティス(レイ・コリンズ)
・新聞記者(アラン・ラッド、アーサー・オコンネル外)

次第にケーンの様々な姿が浮き彫りにされるが、謎は解けない。
最後に、ケーンの遺品が整理され、燃やされる物の中に…。

"バラのつぼみ"とは、(ハーストの愛人マリオン・デイビスの)性的な場所のことでもあるが、映画のラストでは別な意味を暗示。
この作品のテーマは、幼い時に親から手放され愛を知らずに金だけ与えられた孤独な男の悲劇。お金で愛は買えないし、孤独も癒されないというシンプルなこと。

「自己愛に乾杯。
誰だってそれしかない。自己しか」

ハーストによって上映妨害運動が展開され、興行成績は散々。
当初、ジャン=ポール・サルトルやジョルジュ・サドゥールの批判もあり評価されなかったようだが、ヌーベルバーグの精神的父アンドレ・バザンが絶賛したのをきっかけにして風向きが変わる。
パン・フォーカス、長回し(ワンシーン・ワン・ショット)、ローアングル、クローズアップなど革新的な映像技法とストーリー構成で、現在まで映画関係者や批評家の評価は絶対的。
なお、オーソン・ウェルズは、ジョン・フォードの「駅馬車」を何度も見て映画制作に臨んだとのこと。
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