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いぬのakrutmのレビュー・感想・評価

いぬ(1963年製作の映画)
4.0
ジャン=ピエール・メルヴィル監督とジャン=ポール・ベルモンドのタッグによる、フレンチ・フィルム・ノワール。刑務所から出所したばかりのモーリスは、強盗を企て実行するが、その情報が警察に漏れて仲間を殺されてしまい、自分も怪我を負ってしまう。モーリスは、この計画を知っている仲間のシリアンが警察の「いぬ=スパイ」であると疑い、復讐を企てる。

ノワール映画特有の映像と音楽がとても素晴らしい(トレンチコートにソフト帽という出で立ちのモーリスが高架の下を歩くだけの冒頭のシーンからカッコいいのである)とともに、セルジェ・レジアニとジャン=ポール・ベルモンドの演技が見どころである。特に、『勝手にしやがれ』で見せたような粋がるチンピラ若者とは異なる、大人の渋さを発揮したジャン=ポール・ベルモンドが光っている。彼のファンであれば見ておくべき作品であろう。

また本作では、サスペンスフルなプロットや、警察のいぬは一体誰なのか(本当にシリアンなのか)という謎解きも楽しむことができる。とは言っても、登場人物が予告もなくどんどん出てくるので、ストーリーを追っていくだけでかなり大変である。これから観るという人は、このことを覚悟しておいたほうがよい。結局、本当に誰がいぬだったのかは、個人的には曖昧なままである(という解釈が可能だ)と思っている。そういう意味でも、クセモノ感が漂っているジャン=ポール・ベルモンドの演技が好印象なのである。
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