Maoryu002

シン・レッド・ラインのMaoryu002のレビュー・感想・評価

シン・レッド・ライン(1998年製作の映画)
3.5
第二次世界大戦中、ガダルカナル島での激戦を描いたテレンス・マリック監督による大作。

その映像はあまりに残酷で救いがなく、ドラマのない戦闘シーンは実際に戦った人間じゃないと描けないように思えた。
丘の上の日本軍のトーチカを攻略する映像なんかは見事なんだけど、結局は“戦争は醜く残酷で、兵士は感覚を麻痺させるしかない”っていうメッセージだけが残る。

だから一人に焦点を当てず、ヒーロー不在で淡々と戦い死んでいくだけだ。
部下を死なせることをためらい命令に反抗するスタロス大尉が登場するが、彼自身が言う通り「正しいのかどうかわからない」まま退場していく。
ちなみに演じたイライアス・コティーズはほぼ悪役ばかりだが、この映画では素晴らしく人間的な役柄を演じている。青春映画「恋しくて」のスキンヘッド小僧がいいオジサンになっていた。

そして、オープニングからエンディングまで、随所に戦場と大自然の動物たちの対比が映し出され、自然の中で戦争がいかに異質で相容れないものかを訴えかけているように見える。
大自然を背景にした、登場人物たちの心の声は詩を聴いているかのようだ。「死は、調和している海と陸による復讐なのか?」「このような悪はどこから来たのか?誰が幸せを奪い楽しんでいるのか?」「自分たちの死は地球の糧になるのか?」という救いを求めるようなつぶやきは、支離滅裂ではあるが戦場での生の声として説得力がある。

あわせて、ショーン・ペン、ジム・カヴィーゼル、エイドリアン・ブロディ、ジョン・キューザック、ウディ・ハレルソン、ニック・ノルティ、ジョン・トラボルタ、ジョージ・クルーニー、ジャレッド・レト、ジョン・C・ライリーという超豪華俳優陣の、誰一人突出しない演技がこの映画のメッセージを強くさせている。
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