安堵霊タラコフスキー

シン・レッド・ラインの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

シン・レッド・ライン(1998年製作の映画)
4.7
テレンス・マリックが天国の日々から実に19年ぶりに手がけた映像詩。

最初にツリーオブライフを見たときはテレンス・マリックの作風変わったかなと思ったけど、改めて見ると実は露骨なくらい詩的な作風ってこの頃から変わってなかったと気付かされた。

密林のシーンや前半の戦場となる草原のシーン等戦争映画にしては美しいシーンが山ほどある映画となっているのは実にマリックらしいが、特に素晴らしかったのは薄暗いのは夕暮れのせいかと思ったらかかっていた雲が晴れ明るくなる場面で、あの現象が起こるまで待機していたにせよあそこまで劇的に撮る手腕には感嘆するばかりで、やはりテレンス・マリックの映像への拘りは尋常ではない。

そんな詩的で芸術的なシーンに詩のような台詞やモノローグが重なることも特徴的で若干臭いなと感じる点もあったけど、それが過酷な環境下における現実逃避的なものかもと思ったら結構哀愁が感じられる。

途中人が死ぬシーンばかり続いて怠いなと思うところもあったが、フィクションの映画とはいえ死体に飽きるのは我ながらサイコパスっぽい考え方だから気をつけなければ。

1シーンしか出ないジョン・トラヴォルタやジョージ・クルーニー等おそらく特別出演的なのが多いだろうが中々にキャストも豪華なものとなっているけど、テレンス・マリックの芸術の一部となれるなら1シーンだけでも出たいと思う気持ちはわからないでもない。

しかしほとんど映像表現に特化したようなこの長めの作品を、物語主義的な頃初めて見て飽きなかったのは自分のこととはいえ少し不思議。