COZY922

SAYURIのCOZY922のレビュー・感想・評価

SAYURI(2005年製作の映画)
3.8
【エキゾチック・ジャパンな、昭和的源氏物語】

異論は多々あると思うけれど、私はこの映画が結構好きだ。賛否両論と言うよりどちらかと言えば批判的で厳しい意見の方が目に付くし、アラ探しを始めるとキリが無いほど違和感を覚える箇所があるのは確か。建物の内装、踊り、衣装、音楽、美術など外国人目線での和洋折衷ならぬ和華折衷のおかしな日本。

ゆえに、文化や時代考証の正しさの観点ではNGを喰らってもやむを得ない。でも、必ずしも日本という国と芸者のリアルな描写に拘らずフィクションの” ジャパン国 ” における1人の女の物語と考えればかなりおもしろくて見応えある仕上がりだと思う。

貧しさから芸者に売られた女が一途な想いを胸に花街でのし上がっていく半生を描く。その世界で生きる女達の芸者としての格と男と金銭を巡る確執、嫉妬と侮蔑にまみれた闘い。絢爛豪華な表舞台の裏側で繰り広げられる人間模様。昼ドラのようなドロドロの類いは苦手な私が本作にはなぜかグイグイ惹き込まれたのは、絵画的な美しさとチャン・ツィー、ミシェル・ヨー、桃井かおりなどの女優陣の演技によるところが大きい。

妖しげな朱の色, 肌やおしろいの白, 煌びやかな衣装の色彩と、貧しさや裏側の闘いを投影するかのような陰翳とのコントラスト。桜や雪の美しさ。それらに負けず劣らずチャン・ツィーが綺麗で、一挙一動が画によく溶け込み不思議なオーラがあった。ミシェル・ヨーの抑えた立ち居振る舞いと貫禄もさすがだと思う。

振り返ってみると本作は冒頭に書いたとおり源氏物語のある人物を彷彿とさせ、日本の描写のみならず そこに拒否反応を示す人もいるだろう。が、望まない生き方を余儀なくされた女性を描いたアジアンテイストなファンタジーとしてはとても良かった。

”水はさらさらと岩の間をも流れ、行く手を阻まれると別の方向へ流れる”
”化粧をするのは素顔を人から隠すため”
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