藤見実

殺しが静かにやって来るの藤見実のレビュー・感想・評価

殺しが静かにやって来る(1968年製作の映画)
5.0
最高の幕開け。最低の幕切れ。ラストまで貫かれる凄まじい暴力。どうしようもない雪。モリコーネの音楽。そしてJLトランティニャンとKキンスキーの顔よ。

マカロニウエスタンの傑作なのではないか。西部劇はそんなに観ていないのだが、黒人のヒロイン、勧善懲悪ではないというどころかルールさえ守られない(法外な)凄惨なラスト、全然カッコよくないどんくさい馬等々へんな要素だらけな気がする。

オープニングが本当にカッコいい。雪の地面の横移動、カット切り替わり正面右から真ん中にそれながら現れるシレンチオ(トランティニャン)そのままカメラはズームアウト、モリコーネの音楽。賞金稼ぎたちの顔顔顔。早撃ち。この緊張感と重さ。静けさ。

トランティニャンの顔とキンスキーの顔が異様なアップでなん度も展開されるので最高。。キンスキーはあの滑らかで背筋の凍るささやき声でよく喋りどこまでも残虐、役得すぎる。トランティニャンは”サイレンス”で喋れない設定、ほぼ目と口もとでの演技、誠実な必殺仕事人的な、これも役得。この時点で強すぎる。。駅馬車でのガン飛ばし大会。。最高。。。

キンスキーが男を追い回して鞭打ちする場面の前で男が逃げているところを追うカットで、人物がシルエットになって乱立する木の中を走るんだが、めっちゃカッコいい画。

吹雪とか地面の凹凸とか家の作りとかアメリカのそれじゃなくて完全にイタリアのそれなんだが。撮影地もイタリアなのか?

最後まで見るとこっちが静かになってしまう。悪趣味だというのでは片付けられないと思う。大傑作でした。
藤見実

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