次郎

機動戦士ガンダム III めぐりあい宇宙編の次郎のレビュー・感想・評価

3.8
初代ガンダム劇場版三部作の完結編。こうやって振り返るとホワイトベース隊はドズル以外のザビ家とほとんど戦っておらず、ジオン軍は身内の争いと内ゲバで潰れたようなものであり、アムロも主人公といえど戦場においては1兵士に過ぎないのを改めて思い知らされる。こうした組織の泥臭い感じは、やはり富野監督が学生運動の時代に(本人曰く)体制側の自治会執行部に属していた経験が大きいのだろうと思う。

個人的に1番驚いたのは父親との再会。第一話では憧れの存在だったはずの父が、再会時には酸素欠乏症になり白痴化しているという残酷さ。監督自身、インタビューで軍事工場に勤めていた父親に対する怒りを表明しており、「技術と社会との関係、特に武器と社会との関係を真剣に考えなかった技術者の末路は、ああいう結果になるということですよね」と発言している。本作における父親の扱い方にこのような考えが込められているのは間違い無く、何度も考えさせられてしまうシーンだった。

情報によればTV版から作画の7割は描き直されたとのことだけど、だからこそ残りの3割が目に付いてしまったかも。モビルスーツ周りは整えられていたのに、人間のみのシーンになると途端に荒さが目立つのはご愛嬌。只でさえTV版が打ち切りで急な展開になったものを、それを劇場版で更に省略したのであらすじを追うので精一杯な感じはあった。とはいえ、事実上のクライマックスであるガンダムvsジオングの決着シーンは素晴らしく、真上に打たれるビームライフルは何故それが可能なのかさっぱりわからないものの、神話的構図が持ち得る確信に満ちていた。
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