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愛人 ラマン/恋人・ラマンのRのレビュー・感想・評価

4.3
ショタの次はロリ! ということで久々に5回目見てみた! ロリータ・ドリーム・カムズ・トゥルー。真っ先に心惹かれるのが、冒頭のナレーション、ジャンヌモローの声が、低く、哀しく響き、フランス植民時代のベトナムが見える、メコン川の風景、埠頭に浮かぶ船、行き交う現地人の貧しくも溌剌とした生活の息吹、そこに、15歳の白人の少女が、男物のハットからおさげをのぞかせて、デッキのさくに足をかけている。なんちうカッコいいオープニング! この少女演じるジェーンマーチの、ときに幼く、生意気で、どこまでも純粋で、ときに娼婦のように淫らで、挑発的で、くるくると変化する相貌がすごい。特に前半。小さな歯をのぞかせてぼんやり開いた口元と、ときおりだるそうな猫背気味が、危ういニンフェットのエロティシズム!!! なの?でしょうか? ボクにはただボケーとした幼さにしか見えなかった……そんな彼女がある日、端正で、美しい、中国の富豪と出会う。高級車のバックシートで指と指を触れあい、男を受け入れ、手を握るシーンの緊張感!官能! そして、ついに、彼に体を許す少女。むせかえる性愛! 薄暗い家の、薄いドアの向こうに、街の喧騒、行き交う人々の影…こちら側では静かに男が少女の服を脱がせる……少女の華奢な裸体、なめらかな男の素肌、愛し合う二人の息づかい、肌のにおい、にじむ汗、快楽に開く少女の唇。エロい! となりそうなところに、ジャンヌ婆さんのナレーションがほぼ毎度かぶってきて、うーん、この子とて、いまやもう婆さんなんだな、と思わずにはいられない。そこから少女は金のために、中国男の娼婦になる。男はただただ父の稼いだ金で悠々自適に暮らしている。若いときの苦労は買ってでもせよ。ほんまその通りやわ。この男、馬鹿で、情けなくて、弱っちくて、カッコつけのキザ野郎。激しくもむなしい愛を抱き、性交を繰り返しながら悲嘆に暮れるエロスとパトスは見応えあり。少女の貧しい母と兄は、中国人と関わる娘を軽蔑し、面罵し、打擲する。しかし、畢竟、母もお金の魅力には抗えないのだ……この映画を見ると、ほんとに人間というのは、馬鹿馬鹿しいほど金に振り回される宿命の、哀しい生き物だとよく分かる。男は金の出どころの奴隷であり、女たちは男の金にまんまとあやかろうとする。男の情けなさと女のしたたかさ。男の切り替えの悪さと女の切り替えの激しさ。もう何がなんだか分からない。自分たちでさえ分かってないんでしょう。少し話が逸れますが、実はボクは「女子力」という言葉がかなり嫌いです。なぜならコレ、完全に男目線から男の都合にあわせて女子をジャッジする男根社会性の強い言葉だからです。女子ですら男の視点を内面化してその言葉を楽しげに使ってる姿を見るとき、もうこの国ゃだめだ、と思ったしすることもなきにしもあらずだったりするのですが、逆に「男子力」という言葉が使用されることがないのもその象徴的です。だが、しかし、この中国男にだけは言わせてください、あんた男子力なさすぎーーーーー!!! でも、男の恋愛感情のためには、結局このエンディングは最高に良かったことになってましたね。良かったじゃないですか。もしこれが真反対のエンディングだったら、たぶん彼の恋愛感情のためには最悪の結果となっていたことでしょう。絶対にこれで良かったよ。結局、母と子の混乱も、中国男の悲しみも、理由は違えど、同じ血の通った人間のそれであり、それを感じさせる後半の見事な演出!ラストシーンの切なさ! 心が恋慕にしめつけられ、ちぎれてしまいそうなほどの切なさ! ってなると思ったら大間違いやぞ!!! おい! どいつもこいつも自分の都合ばっかじゃねーか! クソ! こんな感じで書くとこの映画が嫌いなように思われるかもしれませんが、コレはコレですごく面白くて好きです。我々が生きてるのはこういう不純な世の中なのだなぁ、とセンチメンタルに思わせてくれる、とても興味深い映画です。こういう茶番に自分の人生が巻き込まれないようにするために必要なモノとは、一体なんなのか。考えさせられますし、考えていかなきゃいけないよね。どうせみんな数十年したら老人になって死ぬんやから。
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