るるびっち

アフタースクールのるるびっちのレビュー・感想・評価

アフタースクール(2008年製作の映画)
4.4
今更鑑賞。ネタバレではないが未見の方は構えてしまうので、この先の文章は鑑賞後にお読みください。


一回目と二回目の鑑賞で、人物の関係がまったく違って見える。
映像や俳優が持つ性質・その人らしさを巧みに利用し、観ている観客に一種の錯誤をさせている。
どんでん返しの連続というより、
例えば、だまし絵で白い部分に集中して見たとき「砂時計」に見えたものが、黒い部分に焦点を当ててみると「向かい合った人物の顔」に見える、と言う感じ。
人物の役割や関係が、観客が映像や俳優の個性からくる情報で勝手に思い込んだものが、そうではなかったと気づく!!
Aと見えたものが実はBだった!!
まさに「砂時計」→「人の顔」、だまし絵みたいな驚きである。

それが凄いのが1個や2個でなく、連続でくることだ。
一体、我々は何を見ていたのか!! 誤解ばかりして何も見えていなかったのじゃないか!!
「全部解ったような顔して勝手にひねくれて(中略)。お前がつまらないのは、お前のせいだ」
これは劇中の人物に言われた名言だが、解ったつもりでうわべしか見ておらず、映画の本質を理解しない浅はかな観客自身にも放たれたメッセージなのかもしれない。

人生の味わいというのもそうで、「仕事なんてこんなもの」「友情なんてこんなもの」「女なんて」「男なんて」「やりがい」「趣味」「孤独」「差別」「面白さ」なんてこんなものと、勝手に狭めて見ていないか?
本質を知らず、いつもうわべだけ見て勘違いして生きているのではないか?
そんな深い洞察をもたらす逸品だと思う。

最後に、この映画で本当に追うべき相手・本命に関することは3つ位しか情報が出ていない。
①街の背景としてチラっとだけ映る。
②「片岡(ヤクザ)なんかよりも迷惑かけてはマズイ人がおりますから」と一言だけ言及されている。
③エンディング後のTVに映っている。
大がかりな計画はこの本命のためにあったのだ。
どこまでも油断できない映画だ。
るるびっち

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