OASIS

天国に行けないパパのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

天国に行けないパパ(1990年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

余命僅かと告げられた刑事が、任務中に殉職して息子の将来の為に保険金を残そうとする話。

死にたくても死ねない無謀さが笑えるコメディだが、人間死ぬ気になれば何でも出来るもんだと勇気づけてくれるようなメッセージも感じる良作だった。

定年まで後8日に迫ったベテラン刑事のバートは、ある日の健康診断で溶血性の不治の病と告げられてしまう。
是が非でも将来的に息子を大学に行かせたい彼は、殉職による保険金35万ドルを目当てに危険な任務に次々と飛び込んで行く。
薬物中毒のバス運転手によって彼とバートの検査結果が入れ替えってしまうが、そんな事とはつゆ知らず、安全を顧みずにシカゴの大物ギャングや部下らを挑発する。
本人としては一刻も早く銃で撃たれるなりして死んでしまいたいのだが、余りにも死にたい欲求が強過ぎてその命知らずの行動が逆に勇気として讃えられ表彰されるというのが皮肉で面白い。
「早く殺してくれ!」とギャングに自ら迫るカーチェイスが「フレンチ・コネクション」ばりに真っ昼間の高架下を激走する超絶アクションで大興奮間違いなしのシーンとなっていた。

死を間近に迎えた事で、妻に初めて永年言えなかった気持ちを伝えられたり、自殺を決意した犯人を諭す場面でも異様にその説得力が増したりと、死を決心した男から滲み出る達観した佇まいが一つ一つの言葉に何となく生きている者では出せないような深みを齎していた。
相棒に語った「将来を案じて今を犠牲にしたら、本当の幸せは逃げてしまう」という台詞も、老後の為にちまちまと貯金をして出来るだけ節約&禁欲生活を送っている者からしたら言われたくない痛い部分を突かれてしまった気がした。

ギャングのボスであるスタークの居場所を見つけ突入するバート。
バートがスタークに撃てと迫るシーンは、冒頭でスタークが輸送車を襲いスリルを味わいたいが為に警備員に銃を渡した場面と似ていて、死をも恐れないバートに自分自身が死の恐怖を感じてしまい怖気づいてしまうという構図が面白かった。
手榴弾を追いかけて階段を下るシーンや、昇降機に飛び降りるシーンは、死に物狂いに死へと飛び込む姿が逆に怖かったが、これぞ火事場の馬鹿力というべきおじいさんの活躍ぶりに胸が熱くなるのだった。
死んでしまったバスの運転手は残念だったが、生を取り戻したバートが無事息子が大学を卒業するのを見届けれたらいいなと願わずにはいられない作品だった。
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