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座頭市物語のkojikojiのレビュー・感想・評価

座頭市物語(1962年製作の映画)
3.8
1962年 監督は三隅研次。座頭市30本の作品中で三隅監督作品は6本である。
 近頃「女系家族」を観てこの監督作品の面白さに感心して、もう一度、座頭市を観ることにした。

 ある日、座頭市は、下総飯岡助五郎のもとに草鞋を脱ぐ。その飯岡組は笹川組と対立していた。そしてこの笹川組には労咳病みの浪人・平手造酒が世話になっていた。
 市と平手造酒は釣りで知り合う。二人はいつしか心を通わせるが、平手造酒は市の釣りの勘と市が自分が病気であることを当てたことで、並々ならぬ剣客であることを知る。
 「出入り」の機会を待っていた飯岡助五郎は平手造酒が病に倒れたことを聞きつけ殴り込みを決意する。
 この飯岡助五郎と笹川繁造の対立の中で、市と平手造酒の友情と対決がこの映画のストーリーの中心だ。
 
 やっぱり、この監督作品は違う。

 まず、この映画、最初の座頭市なのに、すでに「座頭市」の全てが出来上がっていることに驚く。
 「座頭市」の殺陣は相当研究しただろうと思う。こんな殺陣は、今まで誰もやったことはないのだから。逆手斬りを思いついた時、座頭市が生まれたと言っても多分過言ないのではないか。

 そう言う映画なのに、座頭市はなかなか刀を抜かない。観客は初めて観る座頭市がどんな殺陣をするのか知らない。
 笹川繁造の子分が二人、暗闇で市を襲うシーンが最初の殺陣だ。おそらく、この殺陣のスピードと今まで観たことのない構え、動きに、観客は度肝を抜かれたに違いない。丁度ブルース・リーを初めて観た時のように興奮したはずだ。

 この後の座頭市はこの映画の枠組みで作られている。それぐらいこの映画の完成度は高い。

 座頭市シリーズは全部観ているが、この映画の勝新太郎の演技は今まで観たことかないぐらい新鮮だった。

 泣くシーン、戸惑うシーン、怒りのシーンの迫力に驚く。特に、最後に飯岡助五郎に怒りをぶちまけるシーンで初めて瞼を開くが、そこに見える目は白く光がない。その迫力が凄い。

 平手造酒役の天知茂がいい。座頭市が戦う宿敵はこのシリーズ色々出てくるが、間違いなくベスト3に入ると思う。

2022.11.18視聴-510
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