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座頭市物語のほーりーのレビュー・感想・評価

座頭市物語(1962年製作の映画)
4.4
長期シリーズって段々回を重ねるごとにキャラの変化が微妙にあって、第一作を観直すと意外とキャラクターや映画全体のトーンが新鮮に感じることがある。

『007』シリーズ然り、『男はつらいよ』然り、そしてこの座頭市シリーズも然り。

地味ぃな印象も受けるけど、そこがかえってクールでスタイリッシュさを感じた『座頭市物語』。

オープニング・クレジットで市(演:勝新太郎)が丸木橋をへっぴり腰で歩く姿が映し出されるのも印象的だった。

得意の居合抜きも、中盤までずっとじらしてここぞというところで鮮やかに披露させる演出(もちろん勝新の殺陣が素晴らしい)も痺れる。

で、恥ずかしながら一作目を観るまでは、座頭市が大利根河原の決闘に関係するキャラクターだとは知らなかった。

※大利根河原の決闘は講談『天保水滸伝』や流行歌『大利根月夜』『大利根無情』などで知られるヤクザ同士の抗争ですね。

飯岡の親分(演:柳永二郎)のところで草鞋を脱いだ市は、居合抜きの腕を見込まれて親分から用心棒にと頼まれる。

その頃、飯岡は新興勢力の笹川繁蔵一家と抗争を繰り広げ、ついに大利根河原で決戦をすることになった。

一方、市は釣りを通じて知り合った浪人・平手造酒(演:天知茂)と懇意になる。

市は平手の息遣いから彼が結核であることを悟ったが、平手もまた呼吸の変化に気づいた市を相当な使い手であることを悟る。

彼らは酒を酌み交わし友情を深めるが、実は平手は対抗する笹川一家の助っ人だった。

やがて飯岡と笹川の決戦の火蓋は切られ、市も平手とついに対峙することとなった!

というあらすじ。

虚無的な平手造酒を天知茂が魅力たっぷりに演じている。そしてやはり市との対決シーンは見もの。

でも一番唸ったのは、笹川一家が飯岡一家を町の中に誘き寄せて奇襲をかけるシーンかも。

美しい殺陣の勝負ではなくヤクザ同士の醜い殺し合いが繰り広げられて圧巻のシーンだった。

あとは南道郎の外道ぶりが印象に残る。あの末路はまさに外道にふさわしいものである。

■映画 DATA==========================
監督:三隅研次
脚本:犬塚稔
製作:森田信義
音楽:伊福部昭
撮影:牧浦地志
公開:1962年4月18日(日)
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