子持ちのカイロレン

日本侠客伝 絶縁状の子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

日本侠客伝 絶縁状(1968年製作の映画)
4.5
 シリーズも8作目で現代篇に突入。高度経済成長の中で次第に居場所を失うヤクザたちを描くハードな作品。身をもっていなせな生き方を示す健さんの背中がいつもより大きい。これまでを総括するようで作りで、大きな円環が閉じたような感動がある。
 このシリーズは第一作で親方を演じた伊井友三郎の言葉がいなせの精神としてシリーズを貫いている。第一作以来の再登板となった伊井友三郎はしかし冒頭から刑務所の中。そんな親方の盃を割らなければならない辛さ。シリーズを追いかけてきた人にはこれまでが全否定されるような重い展開。その分最後のカタルシスも凄い。敵はこれまでの天津敏から、より狡猾な渡辺文雄に交代。刀を握ったことがないヤクザたちがひたすら間合いをはかるリアルな殴り込み。チーム解散からの逆襲はまるで日本侠客伝エンドゲーム 。伊井友三郎が最後に健さんに語る言葉に号泣。
 第六作に続いて登板の松尾嘉代はマキノ監督理想の普通じゃありえない女性像を体現。健さんが屋台で一人飲みを終えて帰ろうとしたら後ろからそっと傘を差し出し、飲み屋に金を払ってくれる、この後、健さんが組の解散を語る3分半の長回しも横に立つ松尾嘉代の潤んだ目があってこそ。殴り込み前のやり取りもシリーズ屈指の泣かせ所。