鍋レモン

スタンド・バイ・ミーの鍋レモンのレビュー・感想・評価

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)
5.0
⚪概要とあらすじ
スティーブン・キングの短編小説「死体」をロブ・ライナー監督が映画化したノスタルジックな青春ドラマ。

オレゴン州の小さな田舎町キャッスルロック。それぞれに家庭の問題を抱える4人の少年たちが、町から30キロばかり離れたところに列車の轢死体が放置されているという噂を聞き、死体探しの旅に出る...。

⚪キャッチコピーとセリフ
“爽やかな驚き。”

「僕って変わってる?」
「変わってるけど、誰だってそうさ」

⚪感想
スティーブン・キング原作の映画。

原作を読んだことがあるんだけど登場人物が多すぎて列車を避けるところ辺りで挫けた思い出。映画を観れてよかった。

簡単に説明してしまえば子供たちがただ死体を探しに行くだけの話なのに物語の面白さと感情が込み上げてくる感じが凄い。
傑作って言われてるの凄く分かるし、名作は時代が変わっても色褪せず面白い。

少年たちの好奇心、苦悩、成長がこの短い時間とちょっとしたテーマの中で綺麗に描かれている。

友情メインの青春好き。

スティーブン・キングに昔の子供の青春描かせたら勝てる人いないのでは。
監督が変わってもスティーブン・キングらしさが残るの不思議。
『IT』や『アトランティスの心』、『ドリームキャッチャー』と。『IT』であればゴーディはビル、テディはリッチー、バーンはベンっぽい。

ベン・E・キングが歌う主題歌『スタンド・バイ・ミー』のマッチ具合い。
あのシーンのゴーディとクリスを歌った曲って感じがする。

ジョン・キューザックとキーファ・サザーランドが出演。
ゴーディの優しそうなお兄ちゃんとゴロツキ。

ゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人の友情がたまらん。
性格も個性も違うけどどことなく境遇は似てたりしてウマが合ったのかな。喧嘩もあるし口も悪いけどその関係性が羨ましくもあり切ない感じ。

ノスタルジックでエモくて、切なくて、悲しくて、懐かしくて、恥ずかしくて、苦しくて、少し温かい。

ファッションと映像の色味が好き。
シャツをジーパンに入れるスタイル良い。冒険するにつれどんどん汚れていく服も好き。

たった2日ほどの出来事でも彼らにとっては一生忘れられない大切な出来事になったんだろうなと。時間はひと時でも思い出は永遠みたいな。

希望よりも悲しみが深いような映画。

演技力が高く美形の俳優さんは早くに亡くなってしまう人が多いなと。リバー・フェニックスにポール・ウォーカーにジェームズ・ディーン、ヒース・レジャー、ブラッド・レンフロ、アントン・イェルチンなど。

子供たちの中で一番リバー・フェニックスの演技が上手かった。美しい顔立ちの中に寂しさと影があった。

スティーブン・キング恐るべし。
タイトルは『死体』じゃなくて『スタンド・バイ・ミー』でよかった。

クリスの脆さはゴーディにしか分からないんだろうね。



⚪登場人物(ネタバレ含む)
・クリス
私が一番好きなキャラクター。
一番強気だけど繊細で真面目で心優しい人物。人一倍正義感があり、はっきりしないと気が済まない。実は賢い。
ゴーディの作家としての才能に気づいており助言をしたり、ゴーディが不安定になった際に支える。
高山みなみさんの吹き替えで最初はコナンだって思ったけどすぐに馴染んで感情移入してしまった。

・ゴーディ
兄を亡くしているってところから『IT』のビルが弟を亡くしていたから何となく共通点もあって見た目とか性格も何となく似ていたなと。
ゴーディの途中で話した物語の面白すぎて。汚いのオンパレードだけど映像としては汚すぎずゲラゲラ笑えた。

・テディ
眼鏡の男の子。父親に耳を焼かれた経験があるも父のことは誇りに思っている。
耳と目の問題で軍隊に入れず一時は刑務所に入ったが、出所後は臨時雇いで働いているとか。

・バーン
太っちょくん。臆病。
歩いていくのが醍醐味なのにヒッチハイクでとか言っちゃったり、食べ物じゃなくてクシをもってきたり、橋を渡る時ビビりすぎて四足歩行になったり、テディ驚かしたら殴られたりと面白かった。



⚪以下ネタバレ



車の中でゴーディが弁護士クリスの刺殺の新聞記事を見て、目の前を自転車で過ぎていく少年2人を見て回想に入る展開。
4人は親友だったけどゴーディとクリスと間にはさらに特別なものがあったんだろうなと。

クリスとゴーディのやり取りが1番好きだった。お互いを理解し合ってる感じ。
クリスはゴーディに物語を書く才能があることを知っているし、自分と付き合ってるとゴーディの評判まで下がってしまうことを知っている。ゴーディはクリスが頭が良く他の人が思っているより心優しく繊細であることを知っている。
様々な思いや苦悩がある中でクリスのゴーディを思う気持ちに泣ける。ゴーディが気絶した時とか、親に愛されてない自分が死ねばよかったと嘆いた時にそばにいてあげることとか。そんなゴーディもクリスを信頼しているしクリスもゴーディを信頼していてミルクのお金の件の真実を伝えたりしていて。クリスはどこか弱みを見せないところがあるから尚更。

クリスがゴーディにとって時に親友、時に兄、時に父親となるのが微笑ましく苦しい。クリスも抱えているものが重いのにしっかりしていて強くてかっこよくて...。

ゴーディはクリスといたいけどクリスはゴーディの才能を見抜いているからが切なくて。『グッドウィルハンティング』っぽさ。

クリスは拳銃に弾が入っているのを本当に知らなくてゴーディに迫られた時に小指の約束を丁寧にしていたり、ゴーディが帽子を不良グループに取られた時に不良グループに立ち向かったり、テディが列車に立ち向かおうとする時に心の底から怒ったり、その後テディと喧嘩になった時に最後まで仲直りの握手をしようとしたり、どっちの道を進むか聞いた時にしっかりみんなの意見を聞いていたりと正義感や正しくあろうとする姿勢が凄い。

親、兄、教師とどこにも信頼できる人がいなくなってしまったクリスを思うと苦しみしかない。
「私のそばにいてくれ」はクリスの思いなのかな。

クリスのような人間がゴーディと10年も合わないことあるかとも思うけど子供の頃の友情は案外そんなものだったりするのかもなと。

クリスとゴーディの別れの会話が本来は「See you」「Not if I see you first」で吹き替えになると「さようなら」「またなと言えよ」だとか。

以下ストーリー。
作家であるゴーディは新聞の「弁護士クリストファー・チェンバーズ刺殺される」という新聞記事に目をとめ、少年時代を思い返す。
オレゴン州の田舎町キャッスルロック。ゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人。ある日バーンが不良グループの会話を盗み聞きし、3日前から行方不明になっているレイ・ブラワーという少年が、30キロ先の森の奥で列車に跳ねられて死体がそのままになっていること知る。それをバーンはゴーディたちに話し死体を見つければ有名になると言う理由から、死体を探しに行く。喧嘩があったり、列車に轢かれそうになったり、水溜まりに落ちヒルに吸われるなどしながら探索へ。無事死体を見つけるも不良グループのエースたちも死体の話を聞きつけそこに現れる。エースは死体を渡せとナイフで迫るが、ゴーディが上空に銃を発砲し、銃口を突きつけたことで不良グループは退散する。死体は匿名で警察に通報し冒険は終わる。4人はいつものように町外れで別れるのだった。その後はお互い疎遠になっていく。ゴーディは作家となり、結婚して2人の子供が、クリスは弁護士に。その後クリスと10年以上会っていなかったが、クリスが喧嘩の仲裁で亡くなったことを知る。ゴーディは「複雑な家庭環境のなかで仲間との友情を感じた12歳の頃のような友達は、二度とできることはない」と思い返す。

⚪鑑賞
金曜ロードショーで鑑賞。
鍋レモン

鍋レモン