カルダモン

スタンド・バイ・ミーのカルダモンのレビュー・感想・評価

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)
4.9
太陽の光が醸す夏感がたまらない。夏の終わりかけで少し物寂しい感じは、彼らの別れとも重なって切ない。楽しい夏ではないけれども、一生忘れることがない夏。

最初に見たのが吹替版(ゴールデン洋画劇場)だった為、基本的にこの作品に関しての思い入れはこの吹替版に限定されてしまうのだが、暇さえあれば録画したVHSを飽きずに見ていたのでセリフは今でもほとんど覚えている。

涙は心の排泄行為。4人は旅のどこかで一度は泣いている。仲のいい友達の前で泣くというのは、恥ずかしいけどとても安心したりもする。大人になった今ではそんな場面は無くなってしまった。
4人それぞれの涙を見ると、自分が泣いた時のように不思議と心が軽くなる。クリス、テディ、ゴーディが抱えた気持ちが何かの拍子で決壊し、友達の前て晒してしまうのも、この年頃ならではの事かも知れない(バーンは常に半泣き状態なので少し違うけど。)大人になると隠すのが上手くなるから逆に痛い。

死体を見に行くという最初のテンションから一転、実際に身も蓋もない死体を目の当たりにした彼らの反応が何だかリアルだなあと感じる。死体は死体であって、それ以上でも以下でもないという呆気なさ。

90分に満たない作品であるとは信じられないほど、濃密な時間に込められた夏。
始まってしまえば一瞬にして終わってしまう夏のようで、時間が儚くて尊い。