あの、線路に耳をつけて
遠くに汽車の音が聞こえるシーン。
一生できないんでしょうが
一生憧れます。
犬に追いかけられ
しがみ登るフェンス
軒下から聞く噂話
死体はどんなものだろう
目一杯背負ったリュック
夜の焚き火に、いつものぼくの物語
涙を流せば君がいる
ぼくたちだけの秘密基地
今は昔、まぶた裏にいる彼の背中へ
語りかける帰り道。
ドンドンドンッ!
突然私の四畳半の聖域にけたたましく扉を叩く音が鳴り響いた。まさか、見つかってしまったのか?かぶりを振って現実から目を背けようとしたが、戸の向こうから聞こえた怒声が全てをかき消した。
『開けろッ!ポエム警察だ!
濃いめのキューバリバーで晩酌を決め込んだ為に、慣れもしない小洒落たポエムに挑戦してる男がいると近隣住民から通報が入っている!踏み込むぞ!』
私は、とっさに手に持ったiPhoneのfilmarkerアプリを終了してトイレに駆け込み、携帯を便器の中に投げ入れようと試みた。しかし背後で戸を蹴破る音がすると同時に掲げた右腕手首を無慈悲な力でねじり上げられた。抵抗できない力だ。あまりの痛みに短くうめき声を上げると癪に障ったのか私は顔から畳の上に叩きつけられた。
『私がなにをしたという!
離せ!気まぐれに書いた
ポエムのなにが悪い!?』
私は右隣の部屋に住む佐○木さんの迷惑にならぬよう控えめに鋭く叫んだ。無論聞き入れる者がいないのは承知の上だ。まさか佐○木さんが通報を…?いや、彼女に限ってそんなことは…。
目の前に高そうな革靴が見える。ポエム警察はいつ何時でも他人の家に土足で踏み込むことを信条としている。まるでそれが彼らの美徳であり揺るぎない正義だと言わんばかりだ。ポエム一級警察官の腕章を付けて忌々しい光沢のある靴を履いた男が、組み伏せられた私の鼻先に足を運び艶めかしい声を発した。
『ポエムに罪はない。
君の技量に罪がある。連れて行け』
…のちに尋問官が語る話によると、どうやら彼の言葉は私の体を散り散りになるほどにうち砕いたようだ。両の脇を抱え上げられ四畳半の自室から連行される間じゅうずっと、私はうなだれて何かをブツブツと呟いていたという。今となっては昔の話だ。
そろそろ戻って点呼に応えねば、もう独房行きだけはごめんなのでね。
(真面目な話、ほんとにすばらしい
映画だと思います。大好きです)