シネマメンバーズにて、カール・テオドア・ドライヤー監督の4作を一気に鑑賞。超絶傑作の『裁かるゝジャンヌ』(1928年)から時代順に見ていって、3作目が1954年の『奇跡』です。
キリスト教に限らず、どの宗教にもあることですが、形骸化や形式化の悪弊に陥ったり、もともとの教義からどんどん細分化されて色んな分派が生まれたり、挙句の果てに違う宗派同士が争いを起こしたりと、本来の純粋な「教え」が導く理想像とは程遠い状況が生まれてしまっているケースは世の中に多く散見されます。
そんな愚かな状況を、宗派の違う2つの家族の物語として描いていくのが本作で、最終的には、諍いを続けていた2つの家族が融和に向かっていくことで起こる「奇跡」が描かれます。
まさにキリスト教の「教え」の本質の部分を純粋抽出した教条書のような内容ですが、ワンシーンワンカットの長回しによる「リアル」な時間の流れで物語を紡いでいくことによって、最後に起こる(ウソのような)奇跡も自然に受け入れられる気がしたのが凄いと思いました。
『裁かるゝジャンヌ』『怒りの日』『奇跡』を3作セットで見ることで得られるカタルシスがあるのではないかとは思いましたが、自分はキリスト教徒ではないし、むしろ欧米の帝国主義的発想を生み出した根本的要因だとも思っているので、今作の教条主義的な内容よりも、『裁かるゝジャンヌ』『怒りの日』のように「負の側面」を描き切った作品の方が感情移入出来たのは事実です。