千年女優

BIUTIFUL ビューティフルの千年女優のレビュー・感想・評価

BIUTIFUL ビューティフル(2010年製作の映画)
3.0
メキシコから遠くスペインのバルセロナへ移住した中年男性で、双極性障害でアルコール依存を抱える妻と離れて二人の子供を育てるウスバル。生計を立てるために非合法の移民支援を行うも貧しい暮らしを強いられる彼が、末期の前立腺癌で余命わずかとの診断を受けて公私に山積みになった数々の問題に直面する様を描いたドラマ映画です。

デビュー作『アモーレス・ペロス』の成功で国際的な注目を得て以降はアメリカを拠点に活動していたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥがピアノ協奏曲ト長調に着想を得て久方ぶりに母語スペイン語で制作した2010年公開作品で、批評や興行は伸び悩んだものの主演ハビエル・バルデムの演技が称賛されて各国の映画祭を賑わせました。

死を控えた男の生き様というコンセプト自体は黒澤映画『生きる』を始め類型的ですが、イニャリトゥが好む込み入った作劇と演出で彼らしさを表現します。一方でやや一つ一つの題材への深掘りに意外に無断着な姿勢が各々が持つポテンシャルの解放を妨げている感はありますが、バルデムの流石の存在感と演技でまとめあげている一作です。
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