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ミックマックのkahoのネタバレレビュー・内容・結末

ミックマック(2009年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

大好きなアメリの監督作ということで観た!
短い映像で説明し尽くす技術とセンスを役者や監督が十分に持っているし、美術もよくて映像が可愛いので、テンポよく場面が切り替わるのが楽しかった。完全に好きな雰囲気!
コメディセンスも、特に頭の体操のバリエーションはどれもくすっとさせられて好き。
あとキャラクターがそれぞれ際立っているのがいい。発明家おじいちゃん可愛すぎ~~~~~!

彼らの復讐の手段が寄せ集めの廃品によって支えられていたこと、バジルを車内から救いだした際にみんなが「廃品だからね!」と笑いかけるシーンが印象的だったことは、様々な特技があるものの上手く社会に適応できなかった個人の集まりである彼らの性質と無関係ではないと思った。むしろその類似性こそが脚本として秀逸なのかも。

ただ1つ引っ掛かったのは、「ヘテロセクシャルだけを当然のように描くこと」に対する問題意識はかなり薄くて、そうでない人や関係を全く想定しない態度の暴力性には無自覚な印象を受けたこと。
劇中いくつか登場する性的関係はすべて当然のように男女で、侵入先の警備員がシスヘテロ男性であるという前提で作戦が立てられ結果それが成功するし、バジルが意図せずゲイ的な言い回しをしたあと自身はゲイでないと否定する場面は笑いのために描かれている。

社会的にはみ出しものだった境遇の彼らが結束して、それぞれの個性を生かすことで資本主義社会の巨大悪に打ち勝った本作は、マイノリティーな彼ら一人一人を温かく見つめ、彼らの持つパワーを意識的に描き取った作品だと言えるからこそ、セクシュアリティに関しても同様の眼差しを期待したくなってしまった。

(そうした多様性を当然のものとする感覚が一般化したのはここ数年の急速な流れとも思うし、製作されたのが10年前だということを考慮したら仕方ないのかもしれないけど。いやでも10年ってそんな昔でもないような...)
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