カタパルトスープレックス

エレファント・マンのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
4.7
デヴィッド・リンチ監督のメジャーデビュー作であり、ボクにとっても思い出深い作品です。

たぶん、ボクが一番最初に自分のお金でチケットを買って、ひとりで観た映画が本作なんですよ。ひょっとしたら『フラッシュ・ゴードン』(1980年)だったかもしれないけど、これは友達二人で観た。『フラッシュ・ゴードン』には非常にガッカリした思い出しかないのですが、『エレファント・マン』はとても感銘を受けました。小学校6年生だったかなあ。

なんで小学生がこんなマニアックな映画を観たのか?もちろん、すごい話題作だったのはあります。しかし、あのマスクの風貌ですよ。あれがすごくカッコよかった。アメコミの『スポーン』っぽくないです?白黒ですごいカッコいい映画だと思ったんです(小学生の時ですよ!!)。しかし、主人公のエレファント・マンことジョン・メリックは全然カッコよくない。あれえ、期待した映画と違う……最初は少しガッカリしたのを覚えています。

しかし、物語が進むにつれ、どんどんその世界観に引き込まれていきました。ジョン・メリックの変化する境遇に一喜一憂しました。小学生でも理解できるテーマとストーリーライン。そして、ジョン・メリックという素晴らしいキャラクター。映画に必要な三本柱がしっかりとしている。いま思えばデヴィッド・リンチっぽくない。分かりやすさで言えば『ストレイト・ストーリー』(1999年)以上にわかりやすいかもしれない。でも、やっぱり本作はデヴィッド・リンチ監督作品なんですよ。

デヴィッド・リンチ監督の自伝『夢みる部屋』を読めば、デヴィッド・リンチ監督の本質が二面性だとわかります。それは「現実」と「夢」だったり、「前」と「悪」だったり。デヴィッド・リンチ本人はすごく明るい社交的な人なのに、その作品が暗く奇妙なのも二面性ですよね。本作は「障害がない人」と「障害のあるデフォーミー(フリークス)」の話だし、人間の「善良性」と「醜悪性」の話でもあります。外見と内面の美しさは必ずしも一致するわけではない。

あと、撮影技法や音楽の使い方もデヴィッド・リンチ以外の何物でもない。ただ、これは『イレイザーヘッド』(1977年)から変わってない。

本作を『イレイザーヘッド』しか実績がなかったデヴィッド・リンチに任せたメル・ブルックスも偉かった。デヴィッド・リンチは才能がある監督だと思いますが、機会を与えられなければその才能も発揮しようがない。デヴィッド・リンチの映画監督としての人生を変えた人は三人いると思うのですが、メル・ブルックスは間違いなくその一人です。