きよこ

エレファント・マンのきよこのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
5.0
【命の煌めくままに】

記念すべき300レビュー。モノクロでありながら記憶の中ではカラーで認識されている稀有な作品。最近の話題作『グレイテスト・ショーマン』で脚光を浴びた見世物小屋の裏表と私利私欲、人間の本質を垣間見た不朽の名作。

初めて観たときは、幼かったからか衝撃的すぎて容姿が受け入れられなくて、もうこんな怖い映画は観たらいけないと思った。

2回目は映画からメッセージをしっかり捉えることができた。悲しい運命に心が震えて涙が溢れて止まらなかった。社会の光と闇、善人と悪人は紙一重。偽善と罪の上塗りに怒りを覚えた。

それから、何度かながら見で観ていたが、去年サイレント、英語字幕で鑑賞。読み取れない感情を稚拙な語学力で必死で掬い上げて、夢中で貪るように…。それでも涙は止めどなく流れた。

そして今回、改めて日本語字幕で2回鑑賞。外見に左右されて迫害を受け続ける。そのとき、彼は自分の存在を殺して全てを甘んじて受け入れる。そうしないと心まで侵食されていまうからだろう。差別を受け続けると下手に順応してしまう。自己肯定感が欠如していく。何と愚かなことだろうか。人間平等は叶わないだろうが、命は平等で在りたいと願う。尊厳とはなにか、個の存在とはなにか。コミュニティーや個人主義の概念が低かったあの時代に息をするのも苦しかっただろうと悲しくてたまらない。運命を受け入れ、命を燃やし、純粋な心のままに生き抜いたジョン・メリック。饒舌に話す姿を痛々しく思っていまう自分もいる。これが拭えない偏見。

欲や煩悩に囚われている人間の一人として、この映画をずっと語り続けていきたい。
きよこ

きよこ