多治見要蔵

パンズ・ラビリンスの多治見要蔵のレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
4.3
物語の基調となるのは、ビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』だが、「少女」という共通項のもとに、グリム的なメルヒェンの要素や、ルイス・キャロル、宮崎駿などのさまざまな先行作品を、ギレルモ・デルトロ特有のオタク的間テクスト性によって接続していく離れ業。

更には『ミツバチのささやき』ではそこまで前景化されることのなかった、フランコ政権下の非人道的行為をあえて見せることにより、少女自身の主観的現実とその外側にある客観的現実を、あまりに残酷なメタ物語として語ってしまう救いのなさ。

年端もいなかい子どもがひどい目にあう話が好きな人にはオススメの一作であり、アゴタ・クリストフ『悪童日記』やイエールジ・コジンスキー『異端の鳥』を少女の視点で語り直した作品、といえばわかりやすいだろうか(わかりやすくない)。