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パンズ・ラビリンスのditaのレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
5.0
@塚口サンサン劇場

ことばにしたくないくらい完璧な世界観やった。ひとつのエピソードや台詞だけでわかる人物描写。恐ろしくも魅力的なクリーチャー。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか生か死かよりも、彼女は想像力を武器に現実に立ち向かい、勝ったんだと思う。それは決して現実逃避ではなかった。

母親と大尉がどう見ても愛し合っていないように、大人は大人の事情で生きなければならない。クリーチャーだって自分たちの欲を満たそうとする。オフィリアが生きる現実は過酷で信じられる大人なんていない。
じゃあ何を信じるか。自分に見える世界を信じるしかない。

迷宮での試練は現実と重なる。知恵で乗り切り、欲に負け、大切なものを守る。理想の世界はそのまま死に繋がるのかもしれない。でも彼女は想像力を最後まで失わなかった。そんな世界を描いたデル・トロ監督が何年後かに描いた新たな世界でアカデミー賞を獲る。もちろん賞が全てではないけど、想像力の勝利がここにも繋がっていたのだと思うと凄い。

前に観た時はハマらなかったのに今日スクリーンで観たら人生ベスト級によかったから映画って面白い。あとめちゃくちゃ感動したのがエンドロールになっても誰もがさがさせず立ち上がりもせず(たぶん)それぞれの思いを噛みしめていたこと。雨降りの夜、素晴らしい空間で鑑賞出来た幸せに感謝。
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