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パンズ・ラビリンスのsiaのネタバレレビュー・内容・結末

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ファンタジーの最大の魅力は、普通の人生では絶対に経験できないような夢や驚きに満ちた世界を体験することができるという点です。
良い意味でも悪い意味でも、そこには見る者を現実から遠ざけてくれる強烈な魅力があります。
個人的にも大好きなジャンルで、小さい頃からファンタジー小説ばかり読んできました。

だからこそ、この映画の主役であるオフェリアの境遇にはとても感情移入させられます。

おとぎ話が大好きな少女の前にある時突然妖精が現れ、不思議な世界の扉が開かれます。
残酷な現実と対比するようかのように、その世界は非現実的な幻想に満ちています。

つらい出来事が起これば起こるほどに幻想の世界はますますオフェリアの拠り所になり、観ているこちらも不思議な魔法の力でどうにか彼女が救われてほしいと願わずにはいられなくなります。
この映画を通じて、視聴者自身もファンタジーの持つ現実離れした美しさとそこへ救いを求める感覚を追体験させられるのです。

なのでひょっとすると、普段ファンタジーを読まない人の方がより印象深く感じる映画かもしれません。
方向性こそ180度違いますが、『ライフ・オブ・パイ』や『ダンサー・イン・ザ・ダーク』に近いものを感じました。

奇妙で理解しがたいダークな世界観にも心を奪われます。
彼女が夢見る世界は綺麗で幸せいっぱいなお花畑などではなく、不気味で禍々しく常に誘惑に満ちています。
彼女には乗り越えなくてはならない試練があり、地底の王国に帰るためには様々な危険を冒さなくてはなりません。

不気味な怪物に襲われたり義父の存在に怯えたり、オフェリアは現実と幻想の両方で戦いを強いられます。
幻想の世界は彼女が現実で戦うための原動力であり、目的でもありました。

だから結局のところ、この映画の結末が傍から見てどうだったのかということは大して重要ではないのだと思います。
苦しい時代を生き抜いたオフェリアにとって、数多くの試練を潜り抜けてようやく辿り着いたこの結末は、彼女自身が望んで受け入れたものだったからです。
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