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パンズ・ラビリンスのtjZeroのレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
4.0
1944年のスペイン、山あいの村。
少女オフェリアは再婚した母に連れられ、ゲリラと戦う大尉の屋敷へ。
屋敷の外れにある迷宮に迷いこんだオフェリアは、守護神パンから試練を与えられることになる…。

周囲では大戦末期の、血みどろの内戦が続いている。
少女が処理するには、あまりにも過酷な現実がとり巻く。
そんな現実に抗うため、オフェリアは内面にファンタジーの世界を作り上げ、試練を乗り越えていく。それが彼女なりの戦い方。

この映画、登場人物それぞれが、自分なりのやり方で過酷な運命と戦っている。
ゲリラに内通している大尉の家政婦、医師、レジスタンスの闘士たち…物語上の悪役である大尉でさえ、己の職務に忠実という意味では彼なりに過酷な現実と戦っている。描きようによっては、この大尉が英雄のように映る場合だってあったはず。

いろんな戦い方の中で、主人公のオフェリアの、おとぎ話を支えにして現実に立ち向かう姿がやっぱり健気だし、高貴だし、清々しく感じられる。
おとぎ話=フィクションの力を信じるギレルモ・デル・トロ監督による説得力。

オフェリアの内面に引きこまれるヴィジュアルのパワーも強力だけど、古い屋敷のきしむ音、風音、虫の羽ばたき、胎児の泣き声、歌詞の無い子守歌…といった音の演出も秀逸だった。
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