しぇんみん

パンズ・ラビリンスのしぇんみんのレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
3.8
「世の中は残酷なの。それを学ばなくては。たとえ傷ついても」

牧神の迷宮と至高の妄想。

1944年、内戦終結後も厳しいゲリラ戦が続くスペイン山奥の地。

内戦で父を失った少女オフェリアは、妊娠中の母とともに彼の地を訪れる。

そこは、母の再婚相手であるヴィダルが責任者を務める、独裁政権軍の要塞だった。

だが彼は生まれてくる息子のことしか頭に無く、彼女たちを歓待することもなかった。

オフェリアは、慣れない土地と過酷な生活環境により、次第に孤独を感じるようになる。

そんなある日、彼女は妖精に変身した虫に誘われ、近くの森に古くからある地下迷宮を訪れる。

その迷宮には番人である牧神パンが居り、実はオフェリアは地底王国の行方不明となった王女の魂を宿す者だと告げる。

彼女が本来の自分を取り戻したとき、永遠の生命を手にすることができるのだという。

そして、彼女が王女の本物の魂を持つ者かを確かめるため、パンはオフェリアに三つの試練を与えるのだった...。

パンやペイルマンを始め、多少のグロさを孕む迷宮のクリーチャーたちの造詣は非常に好み。

テーマ楽曲となるメルセデスの子守唄も味わい深い。

全編に亘って妄想のような描写が頻繁に差し挿まれ、現実ともファンタジーとも判断し難い物語だった。

「辛く過酷な現実から逃れるため、オフェリアは妄想のファンタジー世界を構築したのだろう」と思ったのだが、改めて考えると、その逃げ込む先すらも昏く重い悪夢の世界だった。

実はこの妄想世界は「死」そのものだとしたら辻褄が合うか。

「死」は可能な限りの甘美な装いを以て、少女を取り込もうとしたのではないか。

そう考えるとあのラストシーンは納得がいくものになる。

根底に流れるものを合わせて考えると、より深みを増してゆく作品だった。

ハナマル!

2019/06/01
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