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のら猫の日記のtenのレビュー・感想・評価

のら猫の日記(1996年製作の映画)
4.0
2人ぼっちなホームレス姉妹のオフビートでロードなムービー。帰る家も存在を肯定される居場所もないふたりはさながら野良猫のよう。居ても居なくても世界は何にも変わらない。けどいいの私たちも世界なんて必要としてないから。
人を信じられず威嚇ばかりする可愛くない姉ローに代わって、幼いがゆえの無垢さを携えながら実は姉よりも大人な妹マニー。純粋さが何よりも強いことってあるけどこういうことだよね。ママの匂いのスプレーをベッドに振りかけて寝るのも強さだと思うよ。スカヨハに似てるなと思ったら本当に幼き頃のスカヨハだったんだ。彼女のオーラと顔つきはこの頃から顕在していて今とほぼ変わらない。

主人公の過去はほとんど語られず、ローのお産のために誘拐されたエレーンしかりなんだけど、彼女にも語るに重い過去があるんだろうな。それと言うのも彼女がこれまでを生き抜いてきた強さや哀しみが見え隠れしていたので。これが本当に良かった。強さと哀しみが柔らかい、優しい炎として瞳で揺れている。エレーンがいなければここまで暖かい物語にはなってなかったと思う。なんだかほっこりして良かったな、木漏れ日みたいに優しい気分になる。
1人また1人と増えて4人になった旅路は、これからも長く続いていくはずなので。途中で暗闇に攫われませんように。嵐で枝が折れませんように。彼女らの安寧と幸せを祈ります。
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