アニマル泉

恋のエチュードのアニマル泉のレビュー・感想・評価

恋のエチュード(1971年製作の映画)
4.5
トリュフォーは映画愛に満ちている。だから襟を正して見なければならない。本作はグリフィスとルノワールとルビッチへのオマージュで出来ている。姉妹といえばグリフィスだ。アイリスアウトやフェードアウトといったサイレント映画の技法が駆使される。官能的な川、海、緑はルノワールだ。冒頭のブランコはいかにもルノワールだ。そして階段と扉はルビッチである。エンドの額縁タイトルもルビッチ風だ。
トリュフォーは「俯瞰」の作家だ。イギリスの場面は坂が印象的だ。人物を俯瞰で捉えて背景に海や川が流れるショットが美しい。アン(キカ・マーカム)の家をクロード(ジャン=ピエール・レオ)が移る隣の家から見下ろす位置関係にあるのが素晴らしい。「火」もトリュフォーの主題だ。クロードとアンが暖炉の炎を背景に、ゲームで椅子ごしにキスするショット、それを嫉妬で目線を外すミュリエル(ステーシー・テンデター)のアップ、ジョルジュ・ドルリューの劇伴曲が響き始める、夜の階段をアン、ミュリエル、クロード、母(シルヴィア・マリオット)の四人がランプを持って昇ってくる、この一連の流れはトリュフォーらしい場面だ。「火」と「階段」が見事な説話的効果を挙げている。
トリュフォーといえば「手紙」「日記」だ。本作では様々なモノローグと客観ナレーションが交錯する。「列車」も印象的だ。クロードがイギリスへ出発する場面、列車のロングショットにクロードの母(マリー・マンサール)のカメラ目線のアップがOLされるショットが面白い。カメラ目線のアップは、ミュリエルが手紙を朗読する長いアップが本作の白眉となっている。クロードの母がイギリスに来る場面、列車と馬車が並走していく美しいショットは決定的だ。クロードとミュリエルの別れの場面、手前と奥に列車が交差する間の二人を捉えるミディアムショットも唸るショットだ。撮影のアルメンドロスは街中の場面ではロングショットを撮らない。船着場の場面もロングショット無しで成立させてしまう。対して自然豊かな田舎の風景は見事なロングショットで魅せる。アルメンドロスは横トラックが素晴らしい。船上からの横トラックで川岸の木々ごしの家、さらに歩き出すアンをフォローしていくショットはさすがだ。
本作は青、緑、赤が強調される。
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