はる

サボテン・ブラザースのはるのレビュー・感想・評価

サボテン・ブラザース(1986年製作の映画)
4.3
これも何度となく観てきた大好きな作品だけれど、今回はちょっと久しぶりだったと思う。『ブルース・ブラザース』と同じジョン・ランディス監督作品で原題は『Three Amigos』。サイレント時代のハリウッドで主演もできた3人組のいわばユニット名で、「アミーゴ」に込められた今作の意図を考えるとそのままでも良かったと思うが、この邦題が醸すとぼけた感じは嫌いじゃない。
ただし今作は「西部劇のルックでガンマンが寂れた村を盗賊団から‥」という筋立てだから、『荒野の七人』(さらにその元は言うまでもなく『七人の侍』)の設定を引用していることがわかる。原題に数を入れる意味はあるのだ。
そんな名作をコメディにしている今作は、やはりおバカなネタが楽しくて、それはランディス作品の味わいの一つだし、さらに製作・脚本・主演を務めるスティーヴ・マーティン一流のユーモアとの相性の良さを感じさせる。本気で手間暇かけてふざけ続けるのがUSのコメディ映画の面白さだなとあらためて思う。

さてネタバレ。
あらためて時代背景が気になったところ、この物語の舞台は1916年のハリウッドとメキシコの片田舎ということだった。トーキーが作られ出すのは10年ほど後のことで、西部劇というジャンルで当時どのようなラインナップだったのかはわからないが、20年代には『幌馬車』といった名作が出て、ジョン・フォードが本格的に映画製作をはじめるようになる。だから変わり始める時期だったのではないかと思う。欧州ではWW1が続いていて、USの参戦はこの翌年である。時代の変換期だったことは間違いない。
そんな変換期にあっさりお払い箱になった“スリー・アミーゴス”は、お金を求めてメキシコに赴く。『荒野の七人』のこともあるが、やはりというか『ブルース・ブラザース』の動機も同様だったなと。しかしそこからお金のためだけでなく、勇気をもって、連帯を経て名誉を得るという流れは実に爽やかで、3人の成長もコミで普通に感動もできる。

名シーンとして挙げられるのは、あの荒野での野営シーンと「歌う木と透明の騎士」のくだり。前者はとにかく動物たちとの共演が素晴らしく、書き割りの背景などあえての「古き良き」雰囲気を作っていて、3人の歌声と動物たちの仕草などとにかく優しい気持ちになれる秀逸なシーンだった。後者は何と言っても最高にバカらしい。人の話をまったく聞かずに「歌い続ける木」がジワジワきて笑えて仕方ないし、そのあとで「透明の騎士」を撃ち殺してしまうのを最初に観た時はとにかく笑えたし、あの悲鳴の味わいなど含めて絶妙なバカらしさで今でも最高だなと。

こうして観ると、ランディス監督はアクション、音楽、ドラマ、コメディを組み合わせながら、それぞれをしっかりと仕上げていくことが大好きなのだ。ベタの良さ、定番の味わいを信じているんだなあ。劇中で唐突にラッキーが盗賊に平和や民主主義や三権分立を推奨するのもバカらしいシーンだが、それは彼の信条でもあるだろう。
ちなみに撮影当時の彼は裁判の係争中で、撮影後はスタジオにフィルムを早々に引き取られ、ポスプロでかなりいじられたという。
実際、全体としての巧妙さはあまり感じられないのだけど、それでも魅力的なシーンがありその絶対値はとても高い。だから今までも繰り返し観てきたし、本当に愛すべき作品だと思う。
はる

はる