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遠い声、静かな暮しのsonozyのレビュー・感想・評価

遠い声、静かな暮し(1988年製作の映画)
4.5
テレンス・デイヴィス監督の自伝的作品。
1940~50年代のリバプールで、暴力的な父親と暮らした労働者階級の家族の物語。(ジャケ写左から母、トニー、アイリーン、メイジー)

ノスタルジックな質感の映像、人物の捉え方、数々の歌や音楽。
もしかすると精神的な病気では?と思わせる様子も垣間見える暴力的な父親を失った家族の愛憎入り混じった感情。
親族、友人との楽しい時間、3人それぞれの成長と結婚。

とにかくみんなよく歌うんですが、これも実話だったら素敵だなぁ。

冒頭から心掴まれるあの家の狭い階段、亡くなった父の目に置かれたコイン(コインはあの父と家の家計の象徴のような存在なんでしょうね)などが強く印象に残ってます。

壁にかかっている写真は実際の監督の父親のもののようですが、演じたピート・ポスルスウェイトそっくり。

『Distant Voices, Still Lives』
「遠い声」(父の罵声、家族の会話や歌声、ラジオの競馬放送...などの音)、「静かな暮らし」というよりも、その記憶は「今も心に在る/生きている」というニュアンスを感じるタイトルもいい。

製作途中や完成後の試写で監督はきっと涙したんだろうなぁとその姿を想像したくなる、家族の記憶。
心に沁みる素晴らしい作品でした。
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