Jiyong

クンドゥンのJiyongのレビュー・感想・評価

クンドゥン(1997年製作の映画)
4.5
またとんでもない映画を観てしまったな。
本当にスコセッシってどこまで思慮深くて視野が広くて頭がいいんだろう。
沈黙も好きだけどこっちの方が好き。

宗教について色々考え直さないといけないな。
政治と宗教、宗教と倫理、とか。
そもそも信じるって何か。輪廻って何か。ダライ・ラマって何だろうとか。
描き方が一つ一つ丁寧。
ダライラマ14世が中国に来て目撃したものと実家に帰ったときに目撃したものの対比。対比は完全な二項対立ではない。
インドに向かう道のりと砂曼荼羅を作る(チベット教の重要な儀式らしい)工程の交差。創造と破壊と融合。チベット教を表しているんだろうけど、全く詳しくないのでそこの真意は深く汲み取ることはできない。
スコセッシの距離の取り方は毎回絶妙だ。圧倒的説明不足も14世の視点だからであって、そこにケチをつけるのは違う。中国の残酷さを強調するのはこの映画のやりたかった事ではないだろう。
でもその適度な冷たさが、圧倒的な優しさや愛に繋がっている感じがして、スコセッシに包み込まれているような気分だった。
スコセッシはこの映画を公開時期?に亡くなった母に捧げている。「無償の愛」の象徴である母に。

幻想の描き方は後期フェリーニみを感じた。リアリズムに突然の幻想、大変心地よいです。

はーーいい映画だった。何度も見直したい。やっぱりスコセッシは凄い。
Jiyong

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