こえ

クンドゥンのこえのレビュー・感想・評価

クンドゥン(1997年製作の映画)
4.5
スコセッシがダライ・ラマの映画を撮っていたなんて知らなかった。映画全般を通してスコセッシ・クオリティなので、存分にその世界観を堪能できた。
内容は、ダライ・ラマ14世の幼少期から、1959年にインドに亡命するまでの話。この映画の他と違う点は、彼の家族にもスポットを当てているところだろう。いきなり、あなたの息子はダライ・ラマの生まれ変わりです、と言われてから、即位し、ダライ・ラマの血族としてポタラ宮に住むわけだから、そこも大事だよなって思った。
全編を通して流れる低い音の荘厳で重苦しい雰囲気。特に、神降ろし(?)の儀式のときの、長いホルンみたいな楽器とその異様な雰囲気、トランス状態の憑代。
14世は1935年生まれ、5歳で即位なので、第二次大戦期を通して少年期を経験していることになる。
中国共産党にとって、宗教は「毒」。脅威をちらつかせる毛沢東にもあくまで非暴力で対抗するチベット側だったけど、その点に関しては、チベット内部でもいろいろな意見があった(ある)ようだ。
中盤にあった、「あなたの最期はチベットの最期です」という言葉が重い。考えれば考えるほど、重い。
ところどころ挟まれる、彼が見る幻のようなカットもこの映画の面白い点だった。血を流して倒れる無数のラマ僧の真ん中に一人彼が立っているシーンはすごかった。金魚が泳ぐ水槽に赤い血のようなものが徐々に流れ渡っていくのとかも。
最後、無事インドの国境にたどり着いたとき、インド人の国境警察の「あなたのお名前は?」という問いに答えた言葉が最も印象に残っている。
興味ある人には進んで薦める、いい映画だった。
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