MASH

錨を上げてのMASHのレビュー・感想・評価

錨を上げて(1945年製作の映画)
4.5
ジーン・ケリーといえば『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』が有名だが、この『錨を上げて』という隠れた名作も忘れてはならない。フランク・シナトラが出てるというのもあるが、そこに更にアニメーションとの融合、ホセ・イトゥルビの凄まじいピアノ。2時間20分というこの時代のミュージカル作品にしては長いが、その中にこれでもかと見せ場を詰め込んでいる。

ジーン・ケリーの目を離す暇もないパワフルなダンス、フランク・シナトラの吸い込まれるような美声、様々なジャンルの音を弾き分けるホセ・イトゥルビの超絶技巧のピアノ。それぞれのプロフェッショナルが最高のパフォーマンスを見せてくれる。これだけでもこの映画から目を離せないというものだ。

だが、やっぱりこの作品の見所はジーン・ケリーだ。今回の彼はあまり歌って踊ってというよりは、踊りがメインとなっている。だが、そのクオリティがあまりに凄まじい。その昔チャップリンが「動きという面ではアニメーションには敵わない」と言った(とか言ってないとか)が、ジーン・ケリーはまさにカートゥーン顔負けの動きを見せてくれる。あのダンスができるのは前提と言わんばかりに、さらに動きに表情をつけている。本当に唯一無二の存在だなと改めて感じられた。

そして、ただの歌と踊りの連続となっていないというのもこの映画の良い部分だろう。ちゃんと一本筋の通ったストーリーがあり、これがコメディとして定番ながら十分すぎるほど楽しめる内容となっている。やや時代錯誤な点やザ・ご都合主義な点もあるが、まぁそこはご愛嬌ということで。

文句ないほど楽しめたのは確かだが、強いて言うなら、それぞれのプロフェッショナル三人が揃って何かするというシーンがなかったのは少し残念な所ではある。まぁそうなったはなったで才能のぶつかり合いになってしまう気もするが…。唐突なシーンが多かったり、ラストに"巻き"が入ってたりもするが、それを差し引いても最高に楽しめる作品になっている。これこそエンターテイメント!
MASH

MASH